ノーベル平和賞 イランの人権活動家 ナルゲス・モハンマディ氏 | 親父と息子の口喧嘩

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 ノーベル賞2023

 

ことしのノーベル平和賞に、イランで長年、女性の権利擁護や死刑制度の廃止などを訴え、現在は刑務所で服役している人権活動家のナルゲス・モハンマディ氏が選ばれました。

ノルウェーの首都オスロにある選考委員会は、ことしのノーベル平和賞にイランの人権活動家、ナルゲス・モハンマディ氏を選んだと発表しました。

モハンマディ氏はジャーナリストとして活動するとともに、2003年に同じくイランでノーベル平和賞を受賞した弁護士のシリン・エバディさんが代表を務める人権団体「人権擁護センター」で副代表などを務め、女性の権利擁護や死刑制度の廃止などを訴えて活動してきました。

しかし、こうした活動が国の安全保障を脅かしたなどとして何度も逮捕され、現在も首都テヘランの刑務所で服役しています。

イランでは去年9月、女性が公共の場で着用を義務づけられているヘジャブと呼ばれる「スカーフ」のかぶり方が不適切だとして逮捕された女性が死亡し、警察による暴行を疑う抗議デモが各地に広がりました。

これについてモハンマディ氏は獄中からSNSに投稿したり、メディアに寄稿したりして、デモへの連帯を示すとともに、デモの参加者に対して政権側が暴力をふるっていると繰り返し非難してきました。

選考委員会「人権と自由を守る闘いを評価」

選考委員会のライスアンネシェン委員長は、授賞理由について「イランでの女性に対する弾圧との闘い、そして、すべての人の人権と自由を守る闘いを評価した」と述べました。

ライスアンネシェン委員長は記者会見で「この平和賞はナルゲス・モハンマディ氏をリーダーとするイランでの運動の重要性を認めるものだ。どんな形であっても運動を続ける上で平和賞が励みになることを願っている」と強調しました。

その上で「イラン当局が正しい判断を下せば、彼女は釈放されこの賞を受け取ることができるだろう。われわれはそれを1番に望んでいる」と話し、ことし12月にノルウェーで行われる授賞式にモハンマディ氏が出席できることに期待を示しました。

「ヘジャブ」をめぐるデモとは

イランでは去年9月16日、公共の場で女性に着用が義務づけられている「ヘジャブ」と呼ばれるスカーフのかぶり方が不適切だとして警察に逮捕された22歳のマフサ・アミニさんが急死しました。

政権側は病死だと主張していますが、警察による暴行が原因だと疑う市民の抗議デモがイラン各地に広がりました。

デモ隊と治安当局の衝突も起き、ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」は、デモの参加者550人以上が死亡したと指摘しています。

現在はデモはおさまっていますが、イランではこのところカフェや事業所などが客や従業員にヘジャブの着用を徹底しなかったとして当局から営業停止を命じられるケースが相次いでいます。

さらに、イラン政府は、保守層の意向を受けて、ヘジャブをかぶらなかった場合には高額の罰金を科すなど、罰則を強化する法案を議会に提出し、先月20日に可決されました。

これに対し、罰則の強化に反対する市民からは「法律が施行されれば、人々の間に対立が生じる」とか「もっと自由になって市民の意見が尊重されるようになってほしい」といった反発の声があがっています。

拘束下にある人が平和賞に選ばれるのは5人目

当局の拘束下にある人が平和賞に選ばれるのは、去年、刑務所に収監される中で受賞したベラルーシの人権活動家、アレシ・ビャリャツキ氏に続き、5人目です。

▼1935年の受賞者のドイツのジャーナリスト、カール・フォンオシエツキー氏は、当時のナチス政権を批判して強制収容所に送られていました。オシエツキー氏は授賞式に出席できないまま、1938年に亡くなりました。

▼1991年に選ばれたミャンマーの民主化運動のリーダー、アウン・サン・スー・チー氏は、軍事政権による自宅軟禁下で受賞の報を受け、家族が代わって授賞式に出席しました。

▼2010年に受賞した中国の民主活動家の劉暁波氏は、国家と政権の転覆をあおったとされる罪で、刑務所に収監されていました。妻も事実上の軟禁状態にあったため授賞式には誰も参加できず、賞状は空席のいすに置かれました。

▼去年受賞したビャリャツキ氏の授賞式には妻が代理で出席しました。ビャリャツキ氏は公共の秩序を乱す活動に市民を巻き込むなどしたとして起訴されていて、ことし3月、ベラルーシの国営通信社は、裁判所が禁錮10年の判決を言い渡したと伝えています。

ノーベル平和賞とは

ノーベル平和賞は、軍縮や民主主義、人権の尊重、平和な世界の実現などに貢献した個人や団体に贈られるほか、近年は環境問題などへの取り組みにも贈られています。

賞が始まった1901年から2022年までの間に、110人の個人と27の団体が受賞し、このうち▽ICRC=赤十字国際委員会は3回、▽UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は2回、受賞しています。

ノーベル賞の6つの部門のうち物理学賞や経済学賞など5つの賞は、賞を創設したアルフレッド・ノーベルの母国のスウェーデンで選考されますが、平和賞だけはノーベル自身の意向で隣国のノルウェーで選考され、受賞者の発表や授賞式もノルウェーの首都オスロで行われます。

選考にあたるのはノルウェー議会に任命された5人の選考委員で、毎年1月末までに世界各国の有識者や議員などから推薦を募り、推薦された候補者の中から受賞者を絞り込みます。

受賞者は選考委員会の全会一致での決定を目指しますが、委員の意見が分かれ期限内に決まらない場合は、多数決で決定します。

誰がどの人物を推薦したかなど選考の過程は秘密とされ、50年後にならないと公開されない仕組みになっています。

ノーベル委員会によりますと、ことしはこれまでで2番目に多い351の個人と団体が、候補に挙がっていたということです。