事故
“魔の7歳”
そう言われるほど7歳は突出して車にはねられやすいんです。
「車に気をつけて!」「よく見て!」
つい言ってしまうその言葉、実は子どもに伝わりません。
新しいランドセルを背負ったピカピカの1年生たちを守るために、
どうすればいいのでしょうか。
(大阪放送局 記者 中本史)

令和3年に全国で歩行者が車にはねられた交通事故の年齢別のデータです。
7歳が飛び抜けて多く732人。
その後は下がって10歳では半分くらいになり、大人と変わらなくなります。
なぜ7歳がこんなに事故に遭いやすいのか。
背景には“もう小学生だから大丈夫”という大人の思い込みがあるようです。
子どもの事故防止に取り組む大阪大学大学院の特任研究員の岡真裕美さんに聞きました。

岡さん
「小学生になると、登下校で1人行動が始まりますが、実はまだ交通ルールがわからないままです。周りの大人も“もう小学生なんだから”と1人歩きを当たり前と考えがちなんですが、少し前までは幼稚園児や保育園児です。急に成長するわけではありません」
たしかに、園児のときは、親と一緒に歩いていたはず。
小学生になったからといって、ある日突然、交通ルールが分かるわけではありません。
幼稚園や保育園の交通教室で学んでいる子どももいますが、岡さんによると、“青信号で渡りましょう”程度しかわかっていないことが多いそうです。

車の方向指示器の意味を知らなかったり、標識や道路の「止まれ」の文字が読めていなかったり。
大人にとっては当たり前すぎて、教えていないことも多いということです。

さらに、1年生の事故がとくに多くなる時期があります。
月別にまとめた1年生の事故の件数を見ると、4月よりも5月・6月のほうが多くなっています。
入学直後の4月は、保護者が付き添ったり、集団登下校が行われていたりするほか、ボランティアの見守り活動も活発です。
しかし、大型連休明けからは、子どもも周囲の大人もそうした緊張感が解けてきます。
ひとり歩きが始まる5月以降、事故が増えてくると考えられています。
また、秋も要注意。
薄暗くなってドライバーから歩行者が見えにくくなる薄暮の時間帯と、帰宅時の時間帯が重なるためです。
では、7歳の事故はどうすれば防げるのでしょうか。
岡さんは、“未就学児のときから何度も教えること”を挙げています。
年齢別の事故データでは、7歳をピークに事故が減っていきます。
そのデータのかげには、もう少しで事故になりそうだった無数の「ヒヤリハット」があるといいます。
岡さんは、7歳以降の事故が減っていくのは、ルールが分からない子どもたちが「ヒヤリハット」で怖い体験をして行動が慎重になっていった結果だと考えています。
ということは、ルールを分かってさえいれば、7歳でも慎重な行動ができ、事故を防げるはずだと言います。
岡真裕美さん
「5歳や6歳の頃から、登下校ルートを何度も教えながら見守りながら歩いてください。1回や2回付き添っただけでは理解できません。子どものゆっくりな理解に寄り添うことが大切です」
ただ、そのルールの教え方には、子どもの特性を踏まえた、コツがあると強調します。

まず理解しておきたいのは、子どもの視野の狭さ。
大人の視野は画面の端まで見えています。
しかし、子どもの視野は中央の円の範囲だけです。
子どもの視野は大人の60%程度だと言われています。
角度で表すと90度ほどしか見えていないんです。
「よく見て!」と言いがちですが、子どもなりに一生懸命見ています。
視野の外で見えていないだけなんです。
このため、「あの電柱まで首をふってみて」といったように、具体的に見るポイントを教えることが必要です。

次に、子どもは“あいまいな言葉”は理解できません。
「車に気を付けて」とも言ってしまいがちですが、子どもはどう気を付けたらいいのかわかりません。
“横断歩道の前では立ち止まって車が来ないか見る”
“ミラーに車が映っていないか確認する”など、
どこで何に気をつけるのか細かく伝えてあげてください。
そして、子どもは発達段階に特有の「衝動性」が強いのも特徴。
ボールを追いかけて飛び出すなど、何かに夢中になると周りが見えない行動をとります。
この特性のため、道路の反対側から声をかけると、周りを見ずに飛び出してきて道路を渡ってこようとすることがあります。
道路を挟んだ声かけには気を付けてください。

子どもたちの命を守るためには、発達の途中だという特性を理解した上で、周りの大人たちが気配りすることが重要です。
道路で子どもを見かけたら、危なくないか見守ってあげてください。
そして何より車を運転している大人は、子どもたちを見かけたら減速して細心の注意を払ってほしいと思います。
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