東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約をめぐる汚職事件で、元幹部らが逮捕された出版大手KADOKAWAは大会スポンサーになったあと、組織委員会元理事の知人の会社と万博やIR=統合型リゾート施設などの分野でアドバイスを受けるコンサルタント契約を結び、総額7600万円を支払っていたことが関係者への取材でわかりました。
東京地検特捜部はコンサルタント契約を装って賄賂が提供されたとみて実態解明を進めているものとみられます。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)は大会のスポンサー選定で便宜を図ったことへの謝礼などとして、出版大手KADOKAWA元専務の芳原世幸容疑者(64)らから総額7600万円の賄賂を受け取ったとして受託収賄の疑いで東京地検特捜部に再逮捕されました。

KADOKAWAは、2019年に大会スポンサーになった後、元理事の知人で共犯として逮捕された深見和政容疑者(73)が代表を務める会社と、東京大会のほか大阪・関西万博やカジノを含むIR=統合型リゾート施設などの分野でアドバイスを受けるとするコンサルタント契約を結んでいたことが関係者への取材で新たにわかりました。

この会社は契約に基づいてKADOKAWAから10回に分けて総額7600万円を受け取りましたが、金額に見合う業務の実態はなかった疑いがあるということです。

東京地検特捜部はコンサルタント契約を装って元理事に賄賂が提供されたとみて実態解明を進めているものとみられます。

関係者によりますと高橋元理事は容疑について「身に覚えがない」などと説明し不正を否定しているということです。

高橋治之元理事 1歳年下の弟が人脈づくりに影響か

大手広告会社「電通」の社員だったころから、国際的なスポーツ競技団体の幹部などに幅広い人脈を持ち、日本のスポーツビジネスの第一人者とされる高橋治之元理事。

その人脈づくりに影響を与えていたのではないかと複数の関係者が指摘しているのが1歳年下の弟 高橋治則氏です。

治則氏は1980年代に実業家として国内外のゴルフ場やリゾートホテルを次々に買収し、当時の資産総額は1兆円を超えるとされました。

政財界に幅広い人脈を持ち自家用のジェット機で世界を飛び回る治則氏はバブル期に時代のちょうじとして注目されました。

2人をよく知る複数の関係者は、電通で活躍する高橋元理事と資金力が豊富な治則氏は、そのころからゴルフや会食などを通じてともに政財界の人脈を広げていったと証言しています。

しかし1994年、バブル崩壊で状況は一転。

治則氏が理事長を務めていた信用組合が経営破綻し巨額の不正融資事件に発展します。

治則氏は国会で証人喚問を受けたあと、東京地検特捜部に逮捕され1審・2審では実刑判決を受けます。

一貫して無罪を主張し最高裁判所に上告中だった2005年に病気で亡くなりました。

兄弟はどのような関係だったのか。

2人と交流があり不正融資事件で治則氏とともに実刑判決を受けた山口敏夫元衆議院議員がNHKの取材に応じました。

山口元議員は「弟の事業が大きくなるにつれて政治家や財界人などいろいろ顔が広がった。兄はそういう人間関係の中で政治家とか民間人とかいろんな関係者と会食して顔を売ってきた」と当時を振り返りました。

バブル崩壊をきっかけに治則氏が表舞台から遠ざかる一方、高橋元理事はスポーツを商業化するビジネスモデルを確立し広告業界のガリバーと言われる電通で専務に昇進。

業界で「レジェンド」と呼ばれるほど存在感を高めていきました。

しかし、その集大成ともいえる東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件で特捜部に逮捕され罪に問われる事態となりました。