
岸田総理大臣は17日召集された通常国会で施政方針演説を行い、新型コロナワクチンの3回目の接種で一般の人の接種の間隔を少なくとも7か月とし、余力のある自治体では6か月に短縮すると表明しました。また賃上げをめぐり近年の低下傾向を一気に反転させることへの期待を強調しました。
岸田総理大臣は衆参両院の本会議で就任後初めてとなる施政方針演説を行いました。
この中で岸田総理大臣は新型コロナ対策について「過度に恐れることなく最新の知見に基づく対応を冷静に進める覚悟だ。一度決めた方針でもよりよい方法があればちゅうちょなく改め、柔軟に対応を進化させていく」と述べました。
そして少しずつ明らかになってきたオミクロン株の特性を踏まえ、メリハリのある対策を講じるとして、重症や中等症患者などに的確に医療を提供することに主眼を置いて医療提供体制を強化する考えを強調しました。
そのうえでワクチンの3回目の接種をめぐり、医療関係者などを対象とする接種の間隔の短縮を加速させるほか、3月以降、接種間隔を一般の高齢者は6か月に一般の人は少なくとも7か月とし、余力のある自治体では6か月に短縮すると表明しました。
12歳未満の子どもへのワクチン接種については希望者ができるだけ早く接種を受けられるよう手続きを進めるほか、学校が休校している際のオンライン授業の準備を進める考えを重ねて強調しました。
また沖縄県や山口県の在日アメリカ軍の施設区域などの周辺自治体で新型コロナの感染が広がっていることを踏まえ、アメリカ軍に関する保健・衛生上の課題について外務・防衛当局などの担当者による「日米合同委員会」で議論する方針を重ねて示しました。
さらに迅速に薬事承認を行う仕組みを創設することや、次の感染症の危機に備えてことし6月をめどに危機に対して迅速かつ的確に対応するための司令塔機能の強化や、感染症法の在り方などへの対応を取りまとめる意向を示しました。
また成長と分配の好循環による「新しい資本主義」を掲げ、デジタル・気候変動・経済安全保障・科学技術などといった社会課題の解決を図るとともに、日本の弱みとされていた分野に官民の投資を集め成長のエンジンへと転換していくと強調しました。
このうち成長戦略の第1の柱は、デジタルを活用した地方の活性化だとして、高速・大容量の通信規格・5Gの基地局を全国の信号機に併設するなど未来のサービスを支えるインフラ整備に取り組む考えを示しました。
さらに経済安全保障をめぐって新たな法律を整備し電力・通信など基幹インフラにおける重要機器などの事前安全性審査制度や、安全保障上、機微な発明の特許を非公開とする制度などを整備すると説明しました。
そして企業などの賃上げをめぐっては近年の低下傾向を一気に反転させることへの期待を示し、できるだけ早期に最低賃金が全国平均で1000円以上となるよう見直しに取り組むと強調しました。
また気候変動問題の分野への投資を早急に少なくとも倍増させるとともに、2050年のカーボンニュートラルの目標実現に向け産業構造や国民の暮らしなど経済社会全体の大変革に取り組むと強調しました。
このほか沖縄県が本土に復帰してからことしで50年を迎えることに触れ「強い沖縄経済をつくるための取り組みを進める」と述べたほか、南海トラフの巨大地震や首都直下地震、それに豪雨などに備えるため5年間で15兆円規模の集中対策を進めると表明しました。
一方、外交・安全保障をめぐっては厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で日本外交のしたたかさが試される1年だと指摘し「未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、現実を直視し『新時代リアリズム外交』を展開する」と述べました。
そしてアメリカのバイデン大統領と早期に会談し、日米同盟の抑止力と対処力を一層強化する意向を示したうえで「同盟国・同志国と連携し、深刻な人権問題への対処にもしっかりと取り組む覚悟だ」と強調しました。
また中国には主張すべきは主張し責任ある行動を強く求めると同時に、日中国交正常化からことしで50年を迎えることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指す考えを示しました。
さらにロシアとは領土問題を解決して平和条約を締結するという方針のもと粘り強く交渉を進めながら、エネルギー分野での協力を含め日ロ関係全体を国益に資するよう発展させていくほか、韓国は重要な隣国だとしたうえで「わが国の一貫した立場に基づき、適切な対応を強く求めていく」と述べました。
また核軍縮をめぐり各国の政治リーダーの関与も得ながら「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げ、年内を目標に広島で初会合を開催する方針を明らかにしました。
このほか北朝鮮のミサイル問題や中国を念頭にした軍事バランスの急速な変化に触れたうえで、いわゆる「敵基地攻撃能力」も含め、あらゆる選択肢を排除せず検討し防衛力を抜本的に強化する考えを示しました。
さらにアフガニスタンで日本大使館の外国人スタッフなどの多くが自衛隊機を利用できなかった教訓を踏まえ、外国人だけでも輸送できるよう、この国会に自衛隊法の改正案を提出する考えを明らかにしました。
憲法改正については「国民的な議論を喚起していくには国会議員が国会の内外で議論を積み重ね、発信することが必要であり、この国会でも積極的な議論が行われることを期待する」と述べました。
また国土交通省が国の統計の中でも特に重要な「基幹統計」のデータを書き換えていた問題について改めて陳謝したうえで「政治・行政がみずからを改革し律していくことが求められている」と述べました。
そして「自分の行動は自分で責任を負う」という意味の勝海舟のことば「行蔵はわれに存す」に触れたうえで「国民の声なき声に丁寧に耳を傾け、国民と共に歩めばおのずと改革の道は見えてくる。引き続き『信頼と共感』の政治に向けて、謙虚に取り組んでいく」と締めくくりました。