新型コロナウイルスの感染拡大で病床のひっ迫が深刻化する中、患者の入院先が決まるまで一時的に治療にあたる札幌市の「入院待機ステーション」の現場を特別に許可を得て初めて取材しました。
現場では、自宅で症状が悪化した患者の受け入れ要請が相次ぐなど緊迫した状況が続き、担当の医師は、医療の提供体制は厳しく、市民一人一人が自分の命を守るための対策を徹底してほしいと呼びかけています。

「病院搬送まで何とか命をつないでいる」

札幌市が5月16日に開設した「入院待機ステーション」は22の病床を備え、医師や看護師など総勢60人が24時間体制のローテーションで対応にあたっています。

NHKは5月29日、患者の受け入れや病院への搬送などの調整にあたる執務室の現場の取材を特別に許可され、感染対策を徹底したうえで初めて取材、撮影を行いました。

執務室には、医師や看護師のほか厚生労働省の災害派遣医療チーム、DMATの専門家などが詰めていて、次々と寄せられる患者の受け入れ要請に対応しています。

ホワイトボードには対応が時系列で記録され、29日は、前日の午後5時以降から、午前6時までのあいだに、12人の新たな患者を受け入れる一方、一時的に受け入れて治療していた2人を病院に搬送したことなどが記されていました。

取材をしている間にも、自宅で症状が悪化した30代から60代の男女合わせて3人の患者の受け入れ要請が保健所から寄せられ、緊迫した状況になっていました。

また、札幌市が公開した病室内の映像では、それぞれのベッドがパーティションで区切られ、防護服を着た看護師が患者の対応にあたる様子が写っています。

“ハッピー・ハイポキシア”のケースも

「入院待機ステーション」で対応にあたっているDMATの近藤久禎医師は、「病床のひっ迫で、治療を受けなければ命の危険がある人たちが自宅にとどまらざるをえない状況だ。もし自宅にい続けていたら亡くなっていたであろう人も複数いた。病院に搬送するまで何とか命をつないでいる」と述べ、綱渡りの対応が続いていることを明らかにしました。

そのうえで、近藤医師は、「新型コロナウイルスの場合、『ハッピー・ハイポキシア』という、本人の自覚症状が無いまま状態が悪くなっていくケースがある。たとえ自宅であっても、体内にどの程度、酸素を取り込めているかが客観的にわかる『パルスオキシメーター』などを使って、自分で自分の命を守る態勢を整えてもらう必要がある」と述べ、市民一人一人に命を守るための対策を徹底してほしいと呼びかけています。