愛知県豊田市では、75歳以上の高齢者を対象にした新型コロナウイルスのワクチンの集団接種が30日から始まりました。市は地元のトヨタ自動車などと連携し車づくりで培ったノウハウを活用して効率的な会場運営に取り組んでいます。

豊田市では30日から75歳以上の高齢者を対象にワクチンの集団接種が始まり、このうちトヨタ自動車の工場内に設置された会場では、トヨタのほか、宅配大手のヤマト運輸もワクチン輸送や会場運営に協力しています。

運営に活用されているのは「トヨタ生産方式」と呼ばれる車づくりで培った生産性を向上させるノウハウで、訪れた人が会場内を何度も往復せずに最短のルートで接種を終えられるようレイアウトを工夫しているほか、順路を色や絵などで案内する看板を設置するなどしています。

豊田市やトヨタは、こうした取り組みで人の流れが滞らないようにして感染リスクを減らすほか、接種時間も短縮できるとしています。

70代の女性は「もっと時間がかかると思っていたが、スムーズに終わりほっとしています」と話していました。

トヨタ自動車生産調査部の宮嶋伸晃主幹は「安全・安心に接種してもらえるようトヨタの生産方式を少しでも活用して日々改善していきたい」と話していました。

“改善”「トヨタ生産方式」とは

「トヨタ生産方式」とは、自動車の生産工程のむだを排除して効率を高め生産性を向上させるノウハウです。

例えば、生産現場では、生産ラインの機械などを周りから見やすくすることで作業の進捗(しんちょく)や異常などを視覚的に把握し、すぐに対応できるようにしているほか、従業員の動線をチェックしたうえで、最適な場所に物を置くようにして作業を効率化しています。

また、むだな在庫が発生しないよう必要なだけの部品を必要なときに調達する体制を整えていて、部品の使用状況もリアルタイムでわかるように管理を徹底しています。

このように、生産工程での課題やむだを発見し修正を繰り返す“改善”がトヨタ生産方式の基礎になっていて、そこで培われたノウハウが会場でも取り入れられています。

具体的には、受け付けにかかる時間などに加え、接種を受けるために腕をまくる時間など、訪れた人の接種を終えるまでの行動を一つ一つ細かく計算したうえで、スタッフの配置やレイアウトを決めているほか、訪れた人が会場内を何度も往復せずに最短のルートで接種を終えられるようレイアウトを工夫したり、順路を色や絵などで案内する看板を設置したりしています。

また、必要な書類は会場の入り口でチェックして、不足があればその場で記入してもらい、受け付けが滞るのを防いでいるほか、ワクチンは必要な量を直前まで現場で見極め、むだが極力出ないようにしています。

さらに、接種を終えた人をシステムに登録するため、タブレット端末で18桁の個人の識別番号を読み取る工程では、手動で行うと時間がかかることから、端末を固定して瞬時に読み取りができるよう工夫しています。

豊田市などはトヨタ自動車やヤマト運輸と連携協定

愛知県豊田市はスムーズなワクチン接種に向けて、トヨタ自動車、ヤマト運輸と連携する協定を結んでいます。

トヨタは、トヨタスポーツセンターなど関連施設4か所を集団接種の会場として提供し、産業医延べ100人や、看護師など延べ350人を派遣するほか、会場の運営スタッフも派遣するとしています。

さらに車づくりで培ったノウハウをいかして接種会場の効率的な運営を支援するとしています。

また、ヤマト運輸はワクチンを保管拠点から接種会場に超低温で輸送するとともに専用の容器を使用して会場での保管も行うということです。

愛知県内では、豊田市と隣接するみよし市もトヨタ自動車、ヤマト運輸と同様の連携協定を結んでいます。