北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は、退役軍人の大会で演説し「自衛的な核抑止力によって、わが国の安全は永遠に担保される」と述べました。米朝の協議が行き詰まる中で核兵器を保有し続ける姿勢を強調することで、アメリカを強くけん制しました。

28日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、朝鮮戦争でアメリカに勝利した「戦勝記念日」と位置づける27日、キム・ジョンウン委員長が退役軍人の大会に出席し、演説したと伝えました。

演説の中でキム委員長は「戦争の苦痛を繰り返さないために、これを抑止できる絶対的な力を持たなければならず、核保有国への道を歩んできた。今や敵対勢力のどのような軍事的脅威にもびくともしない」と述べ、核開発を正当化しました。

そのうえで「自衛的な核抑止力によって、この地に戦争はなくなり、わが国の安全と未来は、永遠に確実に、担保される」と述べ、核兵器を保有し続ける姿勢を強調しました。

キム委員長はトランプ大統領との首脳会談で、非核化に向けて取り組むことで合意しましたが、その後、北朝鮮が制裁の解除などを求めたのに対し、アメリカは完全な非核化に向けた具体的な措置がみられないとして応じず、協議は行き詰まっています。

そうした中で、北朝鮮は核兵器を保有し続ける姿勢を強調することで、アメリカを強くけん制し譲歩を引き出そうというねらいがあるものとみられます。

新型コロナ疑いの中 花火大会開催
新型コロナ疑いの中 花火大会開催

26日、北朝鮮は韓国に脱北し、今月、軍事境界線を越えて北朝鮮に戻った人物が、新型コロナウイルスに感染している疑いがあると明らかにし、最大限の防疫態勢をとるよう呼びかけています。

こうした中でもキム・ジョンウン委員長が退役軍人の大会に出席したほか、27日夜は大勢の市民が集まって、花火大会が開催されており、27日の時点で首都ピョンヤンでは、新型コロナウイルスの感染を抑え込めていると、アピールするねらいもありそうです。

 
菅官房長官「米朝プロセスを後押ししたい」

菅官房長官は午前の記者会見で「北朝鮮の動向については、常日頃から重大な関心を持って情報収集、分析に努めているが、その内容のひとつひとつにコメントは控えたい。

いずれにせよ、重要なことは朝鮮半島の完全な非核化に向けた北朝鮮のコミットメントを含む米朝首脳間の合意が完全、迅速に履行されることだ。わが国としては、引き続き米朝プロセスをしっかりと後押ししていきたい」と述べました。