九州北部を中心に発達した雨雲がかかり続けています。気象庁は福岡県と佐賀県、長崎県のいずれも複数の市や町に大雨の特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけています。周囲の状況を確認し、避難場所までの移動が危険な場合には、近くの頑丈な建物や建物の2階以上で崖と反対側の部屋に移動するなど命が助かる可能性が高い行動をとってください。

気象庁によりますと、停滞する前線の影響で西日本から東北の広い範囲で大気の状態が不安定になり、九州北部に発達した雨雲が次々に流れ込んでいます。

午後3時半ごろまでの1時間には、▽長崎県の大村市付近と東彼杵町付近、▽佐賀県の鹿島市付近と嬉野市付近でおよそ110ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、気象庁は「記録的短時間大雨情報」を発表しました。

また、午後6時までの1時間には、▽福岡県大牟田市で55.5ミリの非常に激しい雨を、▽熊本県山鹿市で46.5ミリの激しい雨を観測しました。

気象庁は、午後4時半に福岡県と佐賀県、長崎県のいずれも複数の市や町に、大雨の特別警報を発表しました。5段階の警戒レベルのうち最も高いレベル5にあたる情報で最大級の警戒が必要です。

特別警報が発表されている地域では、これまでに経験したことのないような大雨となっていて、土砂崩れや浸水などによる重大な災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況です。

これから暗い夜間となります。周囲の状況を確認し、避難場所までの移動が危険な場合には、近くの頑丈な建物や、建物の2階以上で崖や斜面と反対側の部屋に移動するなど命が助かる可能性が高い行動を取るようにしてください。

これまでの雨で土砂災害の危険性が非常に高まり九州のすべての県と高知県、広島県、奈良県、岐阜県、静岡県、長野県では「土砂災害警戒情報」が発表されている地域があります。

川の水位も上がり、長崎県、福岡県、佐賀県、それに熊本県では、「氾濫危険水位」を超えている川があります。

今後の見通し

7日にかけて、前線の活動が活発な状態が続く見込みで、西日本から東北の広い範囲で局地的に雷を伴って非常に激しい雨が降り、特に九州北部では局地的に1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降るおそれがあります。

4日豪雨に襲われた熊本県でも7日の昼ごろにかけて、局地的に非常に激しい雨が降る見込みです。

7日夕方までの24時間に降る雨の量は、いずれも多いところで▽九州北部で300ミリ、▽東海で250ミリ、▽九州南部と中国地方で200ミリ、▽近畿、北陸、関東甲信で180ミリ、▽四国で150ミリ、▽東北で100ミリと予想されています。

また、8日夕方までの48時間の雨量は、▽東海で350ミリから450ミリ、▽九州北部で300ミリから400ミリ、▽九州南部と関東甲信で250ミリから350ミリ、▽四国と中国地方、近畿で200ミリから300ミリ、▽北陸で150ミリから250ミリ、▽東北で100ミリから150ミリと予想されています。

前線は、8日の水曜日以降も本州付近に停滞するため、広い範囲で大雨が続くおそれがあります。

先日、豪雨に襲われた熊本県の被災地や6日朝記録的な大雨となった九州南部などでも、地盤が緩み、川の堤防が傷んだ場所があるなど災害の危険性が非常に高い状態になっています。

気象庁は、広い範囲で土砂災害や川の氾濫、低い土地の浸水に厳重に警戒するよう呼びかけています。

大雨特別警報が発表された地域(午後4時半現在)

大雨特別警報が発表された地域は、長崎県と佐賀県、福岡県の以下の市や町です。

長崎県では、▽長崎市▽長与町▽時津町▽諌早市、▽大村市▽西海市/江島・平島を除く、▽東彼杵町です。

佐賀県では、▽佐賀市▽武雄市▽白石町▽鹿島市、▽嬉野市、▽太良町です。

福岡県では、▽大牟田市、▽八女市、▽みやま市、▽広川町です。

「大雨特別警報」とは

大雨の特別警報は、土砂災害や浸水など、重大な災害が発生している危険性が、極めて高いときに発表されます。

5段階の警戒レベルのうち最も高い「レベル5」にあたる情報で、数十年に1度しかないような、いわば「緊急事態」であることを示す最大級の警報です。

特別警報が出た地域の方は、少しでも命が助かる可能性が高い行動をとってください。避難勧告や避難指示など自治体が発表する情報に注意して周りの状況をよく確認し、安全な場所に避難する必要があります。

ただ、激しい雨が降り続いているため、土砂災害や川の氾濫が発生していたり、浸水が広がっていたりする地域では、外に出て避難すると、かえって危険な場合があります。

周りの状況をよく確認し、外に出ることが難しい場合には無理に避難せず、▽建物の2階以上に上がったり、▽崩れるおそれがある斜面から離れた部屋に移ったりして建物の中のできるだけ安全な場所で身を守ってください。

また、特別警報が出ていない地域でも、すでに大雨や洪水の警報が出ている場合には、今後、状況が悪化して、重大な災害が発生するおそれもあります。

特別警報以外の警報が出ている地域の方も、天候の変化や、避難勧告や避難指示といった自治体からの情報に注意して安全な場所に避難しておくなど、早めに安全を確保してください。

過去の大雨特別警報

特別警報は、気象庁が7年前の平成25年8月に導入しました。初めて特別警報が発表されたのは、導入した翌月の平成25年9月で、台風の影響で記録的な大雨となった滋賀県と京都府、それに福井県に大雨特別警報が出されました。

平成27年9月の「関東・東北豪雨」では、栃木県と茨城県、それに宮城県に大雨特別警報が出ました。関東や東北に「線状降水帯」と呼ばれる発達した帯状の積乱雲がかかり続け、記録的な大雨となって、茨城県の鬼怒川の堤防が決壊するなどの大規模な浸水被害が出ました。

平成29年7月の「九州北部豪雨」では、福岡県と大分県に大雨特別警報が発表され、猛烈な雨によって中小河川の氾濫や土砂崩れなどの被害が出ました。

おととし7月の「西日本豪雨」では、停滞した前線の影響で長時間雨が降り続き、全国の合わせて11の府県に大雨特別警報が発表されました。

また、去年10月、東日本や東北に甚大な被害をもたらした台風19号では、一連の大雨としては最も多い合わせて13の都と県に発表されました。

そして、今月4日には、熊本県と鹿児島県に大雨特別警報が発表されました。