親父と息子の口喧嘩(広島でG7外相会合(米国務長官 広島慰霊碑で献花)) | 親父と息子の口喧嘩

親父と息子の口喧嘩

ある親父とある息子が、社会の色々な事柄について論じます。
こんなことを考えている親子もいるのかと、ぜひぜひ少し覗いてくださいな。

息子 「次は、先日のこの話題で。

"ジョン・ケリー米国務長官は11日、広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花した。広島が世界初の原爆攻撃を受けた都市になって以来、最も高位の米政府関係者による訪問となる。ケリー長官は、主要7カ国(G7)外相会合のために広島を訪れている。(2016年04月11日BBC Japan)"

これは色々な切り口があるが、どうやってみようか?」



親父「いろいろ言いたいことはあるが、まず検証することから始めようや。
引っかかるのが、ケリ-長官のコメントだ。
VOA(April 11, 2016 10:06 AM)から引用させて頂くことにする。
U.S. Secretary of State John Kerry says he is “deeply moved" and "honored” to be the first U.S. Secretary of State to visit Hiroshima, Japan, a city devastated after the U.S. dropped an atomic bomb near the end of World War II.
この『“deeply moved" and "honored”』の部分の彼の真意が理解できない。
『深く感動し、誇りに思う。』
お前さんの解釈を聞きたいな。」



息子 「立場上、アメリカとしては謝罪はできないので、客観的なコメントに徹するしかないのだろうね。この国務長官の訪問は、この後サミットに来るオバマ大統領が広島訪問するかどうかのテストじゃないのかな。これによる日本とアメリカの世論の反応を見ているのだと思うね。

アメリカの高官もこう言っている。(CNN 2016年4月10日) "If you are asking whether the secretary of state came to Hiroshima to apologize, the answer is no," the official said. (長官が謝罪のために広島に来たのかどうか、と聞かれれば、答えはノーである。)"

まぁ、こう言わざるを得ないだろうね。」


親父「どうやら深読みし過ぎたような気がしてきた。
そうだな、儀礼的な挨拶だったんだな。
でも、ケリ-さんは、個人的にはかなりエキサイトしていたようだな。

国務省のトナー副報道官は「ケリー国務長官にとって、とても心を動かされる経験だった。長官は、その後、とても雄弁に話していた」と語った(NHK NEWS WEB・4月11日 19時06分)。

資料館の方も、予定になかったのにもかかわらず、特に希望して見学したんだそうだ。
彼個人にとっては、今回の広島訪問は意義深いものになったようだな。」



息子 「うん。そりゃあアメリカの政治家としても個人的にはかなり興味のあるところだとは思うね。ただ、政治家になったら、そう簡単に訪れることができない場所だったのだろう。

少し深読みすると、今回の訪問の理由のひとつは、予備選で注目されるトランプ氏による『日韓の核軍備容認論』へクギを刺すような意味もあるのかもねぇ。オバマとしては、万が一だけどトランプが後継になって、自分の功績(核廃絶する姿勢)に完全に泥を塗られる形になるのを、止めたいのだろうね。

オバマ氏が広島を訪れることに決まれば、『アメリカ版村山富市』となり得る。日米関係にどういう影響があるかねぇ。」


親父「オバマさんの広島行きは、あまり賛成ではないな。
歴史に残る(?)大演説をなさるつもりらしいのだが、失礼ながら任期の残り少ない方に広島という場をそんな目的で利用して頂きたくない。
それと、日米共に、原爆投下についての米側の『謝罪』に拘る向きが見られる。
現に、10日のワシントンポストの見出しも『In Hiroshima, Kerry won’t apologize for atomic bombs dropped on Japan』だった。
この謝罪という件について、お前さんはどう考える。」



息子 「訪問はよいが、謝罪は日本として危うい方向へ行く可能性があるとみるね。
というのも、『玉突き謝罪』の要求になってしまうかもしれない。

つまり、日本がいわれの無い事実に反したことについても、謝るべきだという論調が強まる可能性があるのではないかな。
『アメリカも大戦での過ちについて謝罪したのだ。どうして日本も従軍慰安婦や南京虐殺で会謝罪をしないのか?』という、いつもの3ヶ国と日本の反日団体が騒ぎ出す可能性がある。

うまく持っていけば、東京裁判でのA級戦犯の罪状である『平和に対する罪』はアメリカにもあたるとして、靖国参拝を含めたA級戦犯についての批判にも、アメリカを巻き込む手もあるかもなぁ。非常に難しいかもしれないけどね。パッと考えたらそういうことが思いつくね。」


親父「まず、私の立場をはっきりさせておきたい。
子孫には、先祖が行ったことを先祖に代わって、他人に謝罪する資格も権利も勿論義務もない。
これが私の基本的な考え方だ。
ここが、中韓のとち狂った連中との違いだ。
もし先祖が過ちを犯したのであれば、それは当事者であるご先祖の責任に過ぎない。
現に生きている子孫とは直接の関係はない。
オバマ大統領もケリー長官も謝罪する必要もないし、またその資格もない。
全ては、戦時国際法を犯し、婦女子老人を虐殺する原爆投下命令を下したトル-マン元大統領の責任だ。」



息子 「そこの部分はまったく賛成だ。ただ、この件で現在のアメリカに謝ってもらう必要はないけれども、彼らの先祖が行ったあの行為を自分たちでどう思うか、ということを考えてもらうのとは別問題だ。

『他国への謝罪』と『先祖の行為を自国民が評価する』というは、全く違う話だ。原爆投下に関してはアメリカ自身が考えることだ。

その後者の部分である『先祖の行為を自国民が評価する』ことは、実は我々日本人が出来ていないことでもある。大東亜戦争の敗戦をした先祖は、戦勝国に裁かれたままだからだ。過去の日本人も敗戦の結果は自国に対して申し訳ない、と言っている。外国人には謝ることなどなく、日本人には謝りたい、と。
東条英機の遺言(一部)はこうある。

『開戦の時のことを思い起こすと実に断腸の思いがある。今回の処刑は個人的には慰められるところがあるが、国内的の自分の責任は、死を持って償えるものではない。しかし国際的な犯罪としては、どこまでも無罪を主張する。力の前に屈した。自分としては、国内的な責任を負うて、満足して刑場に行く。ただ、同僚に責任を及ぼしたこと、下級者にまで刑の及びたることは、実に残念である。天皇陛下および国民に対して深くお詫びする。』

原爆投下についてはアメリカが加害者側なので、日本とは立場が違うと言えば違う。けども、アメリカを一般人虐殺を行った国だと、世界から汚名を着せてしまった非道な行為だと自分たちで認めることは大事だと思うな。」


親父「確かに、アメリカ人には、日本に対する原爆投下について今一度じっくりと考えてもらいたい。
原爆投下は日本の降伏には、ほとんど関係なかったという史実をだ。
本土決戦、一億玉砕を叫ぶ日本陸軍の強硬派に対して、最後の一撃を加えたのは、日ソ不可侵条約を一方的に踏みにじったソ連の対日参戦だった。
だから、日本の本土の陸上戦による日米の犠牲者を減らすために原爆投下がされたという『宣伝』は全くの虚偽のプロパガンダに過ぎない。
この事実は、今のアメリカ国民にしっかりと理解してもらいたいものだ。」



息子 「そして、あともう一つの理由も。2種類の原子爆弾を2カ所に落としたのは、実験だったということ。
京都を含めた原爆投下候補地には、一般空襲はほぼ行っていない。それはどの位、原爆で被害をこうむるのかを正確に測る為だったと言われる。原爆投下後に、空襲の被害だったのか原爆によるものなのか、分かり難くなることを避けたのだ。

このナチスに匹敵する鬼畜の所業を、アメリカは認めるのは辛いと思うが、徐々にでいいのでそこに近づいてほしいな。
謝罪ではなく、自国のしたことをまっすぐ見つめられるように。」


親父「そうだな。2種類の原爆を立て続けに投下したのは、その効果の違いを確かめる為の『実験』だったんだろうね。
しかし、トル-マンは、公式には次のように自国民に発表している(ポツダム会議に関するアメリカ国民へのラジオ報告・1945.8.9)。
日本に関する部分を抜粋すると、
『世界は、最初の原爆が軍事基地である広島に投下されたことに注目するでしょう。それは、われわれがこの最初の攻撃において、民間人の殺戮をできるだけ避けたかったからです。もし日本が降伏しないならば、爆弾は日本の軍需工業施設に投下されなければならなくなるでしょう。そうなれば、不幸にして、多数の民間人の生命が失われるでしょう。
 原爆を獲得したので、われわれはそれを使用しました。われわれは、パール・ハーバーにおいて無警告でわれわれを攻撃したものたち、アメリカの捕虜を餓死させ、殴打し、処刑したものたちに対して、戦争の国際法に従うすべての虚飾をもかなぐり捨てたものたちに対して、原子爆弾を使用したのです。戦争の苦痛の期間を短くするために、若いアメリカ人の多数の生命を救うために、それを使用したのです。
 われわれは、日本の戦争遂行能力を完全に破壊するまで、原子爆弾をひきつづき使用するでありましょう。日本人が降伏してはじめて、われわれはその使用をやめるでしょう。』
となっている。
これが、あの国の『原爆神話』の濫觴なのだろうね。」



息子 「ひどい解釈だけども、この時点では戦争は継続していたのだし、こう言わざるを得なかったのかもね。

この必死の釈明でわかるのは、『民間人を犠牲にすること』をさすがの当時のアメリカでも悪いことだと思っていたんだ、ということだね。原爆投下の前にさんざん民間人をターゲットにした空襲を行っていたのに、そちらはどういう釈明をしたのだろうか。
この辺りもアメリカ版大本営発表で、米国内にいた一般人は真実を知らなかったのだろうね。

ところで、親父は岩国だったかな、疎開の時に広島の原爆の音を聞いたと言ってたよね。それも大変重要な話だから、簡単に話してくれないかな?」


親父「では昔話を一席お伺いいたします。
私が疎開をしていたのは、岩国より少し西寄りになる山口県熊毛郡八代村、現在の周南市八代に当たる小さな村落だ。
中国山脈の只中、標高600メ-トルの盆地だ。
その音を耳にしたのは、昭和20年8月6日、よく晴れた朝だったような気がする。
突然、東の空からド-ンという大きな音が聞こえてきた。
私は国民学校4年生だった。
大人たちも外へ出て騒いでいたのをよく覚えている。
とにかく、今まで誰も聞いたことのない不気味な響きを伴った異様な音だった。
もう説明するまでもないな、それが広島原爆の爆発音だったことを。
翌日のラヂオが、大本営発表を流した。
『大本営発表
一、昨八月六日広島市は敵B29少数機の攻撃により相当の被害を生じたり
二、敵は右攻撃に新型爆弾を使用せるものの如きも詳細目下調査中なり』」



息子 「凄まじい破壊力だったのだね。調べてみたら、八代は広島の中心部まで直線距離で55Km程も離れている。それでも、そんな大きな音が聞こえるとは。
調べてみたら、爆心から22Km離れた呉の海軍基地などでは、戸外に居た人は熱いと感じたそうだ。そのような規模の爆弾を落としておいて、トルーマンは軍事基地のみを狙っただけのような発表をするとはねぇ。

また引用になってしまうが、東京裁判においてインドのバール判事の出したコメントが心に沁みる。

『検察側の掲げる日本の侵略行為の傍証は、歴史の偽造である。かって欧米諸国がアジア諸国に対して行った行為こそ、まさに侵略そのものである。 東条が裁かれるのであれば、同様に原爆投下を指揮したアメリカのトルーマン大統領も裁かれるべきである。スターリンの条約破棄による対日戦参加も違法である。』

東京裁判のアメリカ人弁護士ブレイクに―も同様のことを言っている。改めて、原爆を落とすことは国際法を犯す非道な行為だと感じるねぇ。」


親父「広島に原爆が投下された時期、トルーマン大統領は大西洋上の米海軍巡洋艦オーガスタ上にいた。
ポツダム会談からの帰路であったのだ。
彼は早速ステ-トメントを発した。
『1942年以来原子兵器の完成の競争が米、英とドイツの間に行われてきた。だがわれわれが勝った。20億ドルの予算と12万の人員でわれわれはこの史上最大の科学的冒険で勝利を得たのである。』
結局、彼は自国民に対して、この『無謀な科学的冒険』に巨額の予算と膨大な人員を注ぎ込んだことについての『言い訳』をしたかったのだ。
この釈明のためにも、広島原爆投下は必須の選択であったのだ。」



息子 「こういう原爆投下に関する経緯や背景も、日本人も知っておいた方がいいね。もちろんアメリカ国民も。

オバマ大統領も、ちゃんとこういう話を知っての上で広島訪問をするつもりなのだろうか。そこでどういう声明をだすのか、それを注目したいね。

さて、じゃあ次の話題に行こうか。」



おわり