親父と息子の口喧嘩(アベノミクスは成功したのか) | 親父と息子の口喧嘩

親父と息子の口喧嘩

ある親父とある息子が、社会の色々な事柄について論じます。
こんなことを考えている親子もいるのかと、ぜひぜひ少し覗いてくださいな。

親父「そろそろ話題を変えよう。

率直に聞く。

アベノミクスは成功したのか。
それとも失敗か。」



息子 「安倍政権が終わった時に聞く質問じゃないかな、それは。昭和はよかったか、と聞く質問はあるだろうが、平成はよかったか、と聞くだろうか?

もし現在までのところということなら、失敗してはないと思うな。他国との兼ね合いもあるが、比較的良い方向へ進みつつある。
まず失業率が下がってきて3.3%となっている。失業者の減少が良いことには異論がないはず。非正規雇用が多いということもあるが、これは社会の在り方が変わってきているともいえる。それは企業側も、被雇用側も両方。

株もアベノミクス前よりかなり上昇しているし、大企業の業績も調子がよい。徐々に賃金に反映されてくるのじゃないかな。個人消費が冷えているが、消費者マインドが悪い面に注目したり、経済を批判することに慣れているから、ではないかな。

まぁ普通に考えれば、完全雇用状態になり人手不足になると賃金が徐々に上がっていくはず。
ちょっと色々なポイントがあるけども、まずあげるならこういう理由かな。どう思う?」


親父「お前さんの言うのは歴史的評価の話だ。
経済は生き物だから、時々刻々の評価が必要で、その結果次第では、大幅な舵切りも求められることになる。
アベノミクスの柱は三本の矢で表現される。
ご存知のとおり、第一の矢は『金融政策』、第二の矢は『財政政策』、そして第三の矢は『成長戦略』だ。
今度は少し時間をかけて、それぞれを評価してみようよ。」



息子 「まぁ、それほど経済に詳しくはないのでよく分らないのだけども、『第一の矢』に関しては、量的緩和で円安に振れた。これが輸出の後押しにもなっているし、徐々に海外に転じていた工場も戻ってきているようだよね。』



親父「テ-マから外れるのだが、次のような新聞報道が伝えられている。

『軽減税率盛り込んだ税制改正の関連法案 閣議決定 (朝日新聞)
政府は、来年4月に消費税の軽減税率を導入することなどを盛り込んだ平成28年度の税制改正の関連法案を閣議決定し、5日国会に提出します。』

安倍内閣は、まさか本気で消費税増税を意図しているのではないだろうね。
安倍さんをこのまま信用し続けてもいいのかねぇ。
少々不安になる。」



息子 「安倍さんは、消費税自体を上げるつもりがないと思うけどね。最近の発言を聞いていると、『民意』と言う言葉があるし、選挙で問うつもりじゃないかなと思うな。

ただ、それがW選になるかどうか、そしてメインの争点が憲法改正になるかどうか、はまだ不明だけども。とにかく、消費税をどうするかというのは、もちろんギリギリまで言わないから、今はなんとも言えないねぇ。」


親父「消費税の再増税は、アベノミクスの致命傷になりかねない。
このことは、安倍さんもよくご存知のはずだ。
ここで、一つ腹をくくってみせてほしい。」



親父「さて、本道に戻るとするか
私も経済には詳しくない。
お前さんもそうなら、これは悪いDNAを譲ったことになる(笑)。
ところで、デフレ脱却のための金融政策としては、金融緩和政策がある。
これは素人にも分かり易い。
デフレーションというのは、物価が持続して下がっていく経済現象だよね。
これは誰でも知っている。
したがって、デフレから脱却するためには、物価を持続的に上昇させるように導くことが必要になる。
デフレ下では、需要と供給のバランスが崩れている。
つまり、経済を全体的に観察すれば、総需要が総供給を下回っていることが分かる。
そうであれば、総需要を喚起するような金融政策を採用すればデフレから脱却できることになる。
その一つが、金融緩和政策だといわれている。
ここで一服。」


親父「金融緩和政策とは、日銀が通貨供給量を増やし、民間の資金調達を容易にする政策のことだ。
物の本によると、国債を買い上げたり政策金利と預金準備率を引き下げたりする方法がとられるとある。
政策金利とは、中央銀行が金融市場の調節手段として用いる金利のことだ。
日本の政策金利は、無担保コールレートになっている。

預金準備率については、日銀のHPに、『かつては、準備率を上下させることにより、金融機関のコスト負担の増減を通じてその貸出態度等に影響を与えること、つまり、準備率操作を通じて金融を緩和し、または引き締めることを目的として運用されていました。しかし、現在、わが国をはじめ短期金融市場が発達した主要国では、準備預金制度はそうした金融緩和・引締めの手段としては利用されておらず、わが国の準備率も、1991年10月を最後に変更されていません。』とあるから差し当たっては無視していいだろう。」


親父「日銀が市中銀行等の金融機関から国債や手形を買いあげると、資金がそれだけ供給され、市中に出回る資金の量が増えることになる。
そのため、金利が下がり、金融が緩和される。
少々面倒くさくなってきたが、付け加えておくと、お前さんが触れた量的金融緩和政策というのは、次のようなことらしい。
市中銀行は日本銀行に置いてある当座預金残高の額に比例して融資を行うことができることになっているのだそうだ。
だから、量的金融緩和政策は、この当座預金の残高を増やすことによって、市中のマネーストックを増やそうとする政策なのだそうだ。
とにかく、惜しみなく、じゃぶじゃぶと金をばら撒き、使って貰おうとする作戦らしい。」



息子 「まぁ、金融緩和とはそういうことだろうね。細かいことを言えば、日銀が直接行っているのは、マネタリーベースを増やす政策ということだな。

お金の量が増えると、お金の価値が下がってしまう。対ドル為替でも円安になるということだね。沢山あるものは価値が下がる、当然だね。
通貨の価値が下がる → インフレ ということになる。

そして、価値が下がっているなら、お金を置いておくよりも使ってしまおうという意欲が高まって、滞っていた経済の血流がよくなる。そういうことだろうね。うまくいけば、賃金も徐々に上がり続けて、デフレスパイラルから脱却して、インフレスパイラルに入り込めるだろうねぇ。
そのためには賃金の上昇が物価高にそれ程遅れないようにしないとね。だから安倍さんは、企業へ直接賃金UPを依頼している訳だ。」



親父「円安になれば、海外拠点を持つ輸出企業は、円換算で会計すれば為替益が大きいよね。
日経平均は上がるはずだ。
何しろ外需依存銘柄が多いからな。
これが『黒田バズ-カ』の原動力だろう。」



息子 「そうそう。 株かは実際にかなり上がってるしね。リーマンショック時も、アメリカの大規模量的緩和に対して日銀は何もしなかったので、円高になり続けていた。

それを、やっとこのアベノミクス『第一の矢』で徐々に戻してきている。ただ、中国なんかの外部要因でまだ揺さぶられている。そういう状況じゃないかな。」



親父「異論もあるようだが、ここでは第一の矢は的を射たことにしておこうや。
さて、第二の矢だが、これは『機動的な財政政策』とされている。
財政政策とは、国が行う経済活動に関する政策のことだ。
内政の根幹となる重要政策だ。
アベノミクスの場合では、政府が公共事業の拡大や減税をすることによって、需要の拡大を図る政策をとることになる。」



親父「内閣府のHPを開くと、次のようなスロ-ガンが目につく。
『デフレ脱却をよりスムーズに実現するため、有効需要を創出
•持続的成長に貢献する分野に重点を置き、成長戦略へ橋渡し』
これって、ごくごく当たり前のことだよね。
特に目新しいものはない。
具体的には、下に記すような政策らしい。
全国の道路、鉄道、堤防、下水道などの公共事業の拡大
東日本大震災の復興を加速させるためのインフラ整備、雇用確保
研究開発や中小企業などの成長による富の創出
暮らしの安全や地域の活性化」



息子 「そうだね。先ほども出ていた、需給ギャップを埋めるということだね。有効需要を創生するために、政府が公共事業や減税をする、っていう財政政策が第二の矢ということ。

世界恐慌対策までさかのぼる、ケインズのクラシックな主張だね。21世紀になってもこれか、と言う感じもするけど、やっぱりこれは効果があるのだろうか。

ここで注意しないといけないのはなんといっても、この公共事業に乗っかってムダな予算が増えることだろうね。最近聞かないけど、国土強靭化計画だっけ。ああいう古くなった道路やトンネル等の補強はいいと思うけどね。意味のない道路の伸長計画はやめてほしいな。」


親父「そうだ、そのとおりだ。
社会インフラは、ただただ新しく増やしていけばよいというものではない。
現状の社会インフラを今後、どのように維持管理・更新していくかということこそが喫緊の要事だ。
『2013年12月に国土交通省社会資本整備審議会・交通政策審議会において、国土交通省所管の社会資本10分野(道路、治水、下水道、港湾、公営住宅、公園、海岸、空港、航路標識、官庁施設)の国、地方公共団体、地方道路公社、(独)水資源機構が管理者のものを対象に、建設年度ごとの施設数を調査し、過去の維持管理・更新実績等を踏まえた推計が示されており、現在の技術や仕組みを前提とすれば、2013年度に3.6兆円あった維持管理・更新費が、10年後は約4.3~5.1兆円、20年後は約4.6~5.5兆円程度になるものと推定されている』
物好きなツ-リング族しか見かけない地方の道路網を新設するだけが能ではない。
幹線高速道路網の老朽化したトンネル、橋梁・地盤の整備・更新等こそが最大・最優先の目標となるべきだ。」


親父「またまた話題がずれるが、政府は自治体の「婚活」に補助金を出しているらしいぞ。
『地域少子化対策重点推進交付金』とか言う小難しい名目で、2013年度予算で30億円、14年度予算にも30億円、計60億円も税金を突っ込んでいたらしい。
(Business Journal 2016/2/5)が、『政府、「婚活」に2年で60億円税金投入の愚行』と揶揄している。
大した成果も出ていないのに、『「目標設定」で続行』するらしい。
これが機動的な財政出動の成果なのか。
高齢者に対する3万円のばら撒きと同様の人気取りのためだけの愚策だ。
いい加減にしろ。」


親父「今朝のニュ-スによれば、『働く人1人当たりの去年の給与総額は月の平均で31万3000円余りで、前の年を上回わったが、物価の上昇分を差し引いた実質賃金は0.9%減少し、4年連続のマイナスになった』そうだ。
これで、景気が回復しているといえるのかねぇ。
もっとも、厚生労働省は『給与水準の低いパートタイム労働者が増えたことが実質賃金を押し下げ賃上げの効果が物価の上昇に追いついていないが、実質賃金の減少幅は小さくなっているので、今後の動向を注視したい』と言っているようだが。」



息子 「実質賃金については、よくアベノミクス批判のネタにされるが、ある程度の平均賃金低下は、デフレ脱却の過渡期では起こること。失業者がまず雇用される際には、最初は低い賃金なのは当然のこと。それで平均をとればもちろん低くなるよねぇ。失業者が少なくなる方がまずは重要なんじゃないかな。

さらに見てみたら、実質賃金は2014年10月に底を打って、そこから上昇しているな。4年連続のマイナスというのも、2010年頃から下がり続けているようなので、安倍さんが再登板した2012年12月以前、つまり民主党政権時のお荷物を背負わされてただけ、とも言えないかな。厚生労働省がどういう理由で言うのか知らんが、いかにもアベノミクスのせいだと言わんばかりの言いぶりがイヤな感じだ。

さて、ちょっとアベノミクス談義も長くなってきたし、ここでちょっとまた別のテーマにしてみようか。アベノミクスについては、また改めて、ということで。」