松くい虫という名前を聞いたことがあると思います。

夏になると山の松の木が枯れていく病気です。

この松くい虫ですが、マツノマダラカミキリという日本在来のカミキリムシとマツノザイセ

ンチュウという外来の線虫が起こす、松の伝染病です。

カミキリが松の新芽を食べる時、カミキリについていた線虫が松の中に侵入して枯らして増

殖、その木にカミキリが産卵して、翌春、線虫を一杯つけた状態で飛び出し、また生きた松の新芽を食べて枯らしてしまいます。

マツノザイセンチュウは北米原産の線虫で大正時代、長崎に輸入された米松について日本に

入ってきたと言われ、日本の松には抵抗力が無いので枯れてしまいます。

何故、線虫が松の樹体内に入って、松が枯れてしまうのか?

松は、樹体内に細菌等が侵入したら、その組織にテルペン類を充満させて、殺菌しようとし

ます。当然、組織にテルペン類が充満すると水分流動が止まります。

通常であれば部分的に水分流動が止まってもほとんど影響がありませんし、時間の経過とと

もに回復していきます。

ところがマツノザイセンチュウにはこの殺菌性物質が効かず、線虫はドンドン異動していき

ます。異動した先々で水分流動が止まるため、結果として松が枯れてしまいます。

この殺菌性物質はカミキリの誘引物質でもあり、線虫によって枯れた松にはカミキリが集ま

ってきて産卵していきます。

樹木医として、松くい虫被害なのかどうか診てくれと言うことが多々あります。

その際、新芽をもいでみて、ヤニが出てくるのであれば松は生きている、葉が赤いのは葉枯

れ病、ヤニが出てこないのであれば死んでいて松くい虫の可能性大。

こんな感じで現場で判断しております。