企業の国際的租税回避を目的として整備が進んでいる【移転価格税制】とは? | 中小企業の税金と財務に強くなるブログ

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皆様こんばんは。

あっという間に8月が終わり、夜になるとすっかり秋模様。

 

この季節はよく眠れるので、泥棒が増えるそうです。

 

確かに警視庁における平成28年度の統計を見ると、

 

8月と9月は窃盗犯が多いですね。

 

でも季節では春が一番多いみたいです。

 

季節の変わり目には十分注意しましょうイヒ

 

 

 さて今回は、近年整備が進んでいる【移転価格税制】について

 

概要をご紹介します。

 

 

 【移転価格税制】って聞いたことありますか?

 

あまり聞いたことないですよねえー?

 

【移転価格税制】とは、50%以上の持ち株関係がある

 

外国子会社に製品等を輸出する際に、通常価額より安い価額で

 

販売し、外国子会社が外国にて多く利益を取った場合、

 

その安い金額と通常の金額の差額に法人税を課税する制度です。

 

※下記の場合、通常価額が120円、安い価額が110円ですので、

 120円と110円の差額10円が、国内親会社の法人税の

 課税対象になります。

 

では、企業が何でこんなことをするかというと、全ての国において法人税の税率が

 

違うことが起因となっています。

※財務省資料【法人実効税率の国際比較(2017年1月現在)】

 

上記グラフで日本は平成30年度に実効税率が29.74%となる見込みです。

 

因みに資本金1億円以下の中小企業は、利益が800万円以下であれば

実効税率は25%です。

 

100億円の利益の場合、日本だと29.74億円の法人税が課税されますが、

 

イギリスであれば20億円で済みます。差額の9.74億円ですので

 

この差は大きいですよね。

 

 

 ですので、【移転価格税制】とは、税率の低い外国に

 

子会社を置き、【通常価額】より【安い価額】で

 

製品等を輸出させることで、外国子会社に利益を

 

移転し、合法的に法人税へ減らせるスキームを

 

防止するために出来た制度なのです。

 

 

 因みに国際取引を利用して合法的に租税を免れる、

 

もしくは減額させる行為を、【租税回避】といいます。

 

これは脱税ではないので、法律でしか規制する事が

 

出来ないのが特徴です。

 

 

 ただ、この中で出てくる【通常価額】が一体何なのかが

 

非常に難しく、企業も租税回避の意図がなくても

 

税務調査で指摘され、多くの法人税を課税されることがあります。

 

【通常価額】についてどの金額を基準とするかが明確でなく、

 

また調査機関も長期にわたったうえで、課税庁の裁量により

 

不当に課税処分が行われるとの批判がありました。

 

 

 そこで【移転価格税制】のための基礎資料を準備し、

 

【移転価格税制】に関する事前照会にも素早く対応できる体制を目指して、

 

平成28年度の税制改正により以下の制度が創設されました。

 

なお下記の制度は、平成29年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。

 

※移転価格制度の文書化制度の整備

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

1.ローカルファイルの作成(取引50億円以上)

 ・・・取引金額の詳細を記録したファイル作成

2.国別報告事項(CbCレポート)の提供

 ・・・グループ売上1000億円以上が対象。

   グループ企業の国別の利益等を報告

3.事業概況報告事項(マスターファイル)の提供

 ・・・グループ売上1000億円以上が対象。

   グループ企業の事業の全体構造を提供

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

これらの資料を提供する手間が増えた分、

 

企業には何かメリットがあるのでしょうか。

 

企業は移転価格税制の対象となる取引を事前に課税庁に対して

 

照会する制度(個別照会制度)を活用することが出来ますが、

 

課税庁はこの制度による運用の明確化及び効率的運用による

 

早期判断の開示をうたっています。

 

 

 これらの施策の背景には、OECD租税委員会により

 

2014年に立ち上がった、BEPS(税源浸食と利益移転)

 

プロジェクトによる最終報告書(2015年10月)があります。

 

この最終報告書はG20にて了承され、主要国の共通の

 

ルールとなりました。どうも税源の配分については

 

世界各国の共通の悩みの種となっているようです。

 

 

 今更ですが、ヒト・モノ・カネ・情報の交換が簡単に

 

かつ頻繁に行われるようになり、国境がどんどん意味を

 

なさなくなっているようにも見えます。

 

一方で徴税は国力を示す指標となっている気もします。

 

徴税できない国は当然予算も減り、国家を成立させるために必要な

 

資金を確保できなくなり、国力の弱体化に繋がるからです。

 

ただし、その事実を奇貨として課税強化の施策を打っていくのは

 

課税庁の常套手段えー?

 

 この制度はいわゆる大企業のためのものに見えますが、

 

例えばローカルファイル作成義務の対象売上が少し下がれば、

 

対象となる企業はあっという間に増えます。

 

 

 関係ないと決めつけず、日本政府・課税庁の動向を

 

しっかりと把握しておきたいものですねにやり

 

 

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