観たかった映画『WALK UP』 を観てきた。

ネタバレありますので注意⚠️

※公式サイトより画像お借りしました。


STORY(公式サイトより引用)

映画監督のビョンスは、インテリア関係の仕事を志望する娘のジョンスと一緒に、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れる。そのアパートは1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、地下がヘオクの作業場になっている。3人は和やかに語り合い、ワインを酌み交わすが、仕事の連絡が入りビョンスはその場を離れる。ビョンスが戻ってくると、そこには娘のジョンスの姿はなく…。


どういう映画かよくわからないまま観に行ったけど、なんというか不思議な映画だった。

ストーリーがあるようでないというか、時間軸はよくわからないけれど、映画監督ビョンスとそれを取り巻く女性たちとの関わりが、ひとつの建物の中の各階ごとに描かれていく。

会話の中から読み取れる情報はいくつかあるものの、これといった事件が起こるわけでもなく物語は淡々と進んでいき、最後は冒頭と同じ日に繋がって…。


なんやかんでモテ男ジョンスのダメンズぶりを観る映画…?

ドラマや小説の美しい恋愛の始まりを観て心ときめく…というんじゃなく、フツーのオジサンの恋愛の始まりをリアルに見せられてるみたいな気まずさを感じる。

3階の賃貸部分で同棲してる2人を見て、やっぱりそうなったか…みたいな真顔


モノクロ映画だったけど、建物やインテリアがお洒落で、色使いはどんなだろ?カラーで観たいな〜なんて思ってしまった。

ワインを飲みながらの食事シーンが多いんだけど、ただのサラダもなんだか美味しそうなの。

はっきり料理が写ってる訳でもなく、登場人物が美味しそうに食べてる顔が映るでもなく、料理の彩りで視覚に訴えてくるみたいな絵力でもなく、会話からかの情報からなんか美味しそうだなって思わせられる感じ。


3階の賃貸部分でレストランのオーナー兼シェフの女性と同棲している時は、ビョンスは健康に問題があったのか身体に気を遣って菜食を初めてるんだけど(ただキャノーラ油ではなくオリーブオイル入りのツナ缶は食べるらしいから完全菜食ではないのか)、4階のベランダで不動産屋の女性との食事では、焼き肉と焼酎を食べているのが面白い。


3階で一緒に暮らしていたシェフの女性は、スタイルもよく小洒落た美人で自由奔放なイメージなんだけど、会話からなんとなく二人の本質は噛み合ってないないんだろうなというのが伝わってくるように、彼女のことは好きだけど自分は一人暮らし向きの男なんだと一人ベッドで丸くなるビョンス。


4階のアトリエ向きの狭い部屋(ただベランダは広いので開放感はある)で暮らしている時に突如現れる女性は、不動産屋の女性(クォン・ヘヒョ氏の実の奥様なんだって!)で、ビョンスは高級なお肉や高麗人参を買い与えられ、かわいい人!と抱きしめられ、まるでヒモみたいな生活をしている。

3階でサラダを食べていた時は、こういうのが好きだし美味しいと言ってたのに、4階では肉には焼酎が合うなんて言って、女性によって発言をコロコロ変えるビョンス。


根っからのプレイボーイで女性に合わせて発言を変えるだけなのか、階が上がるごとにビョンスがどんどん解放され正直になっているだけなのかはわからないが、わたしは四階との女性が一番相性が良いのかなと感じた。

4階の女性には、絶対に誰にも言うなよと、自分が見た神様の話をしていたり、高麗人参はしっかり噛んで食べるのよと言われて最後に口の中をアーンと見せたりして、ビョンスが無理をしているような感じが一切ない。


一階、2階では登場する女性(ビルオーナーと数年振りに再会した娘)との会話にどこか気まずさがあったり、3階では恋人の女性シェフとちょっと口論ぽくなったり、食事中にその話はやめよう…みたいな苛立ちがある。

シェフの彼女の前ではちょっとカッコつけてたり、本当は嫌なことでも女性に合わせてちょっと無理をしてるのかな?と思わせる部分が垣間見えるというのか…。

映画の冒頭の一階シーンで出てくるビルのオーナーの女性とは、階を追うごとに関係性が悪くなったのか、最後にはバレバレの居留守を使うビョンスなのだった笑



ビルのオーナーの女性に、4階は狭いけどアトリエ向きと言われて、自分はアトリエじゃなくここに普通に住みたいと言ったように、一番狭いお気に入りの部屋で女性に囲われて暮らすのが、ビョンスにとっては一番居心地が良いのかもしれない。


ビョンスは大きな賞を貰ったこともある映画監督だけど、出資の話がポシャったりして新作が撮れなくて休職中。

海外から回顧展へのお誘いがあっても、新作も撮ってない自分が回顧展なんて…と、いろんなこだわりもあるようで。

不動産屋の女性に、神様の話をもう一回して!とおねだりされて、このアパートで神様から12本の映画を撮れ!という天啓があったと語るのは、大ボラなのかこれから12本の映画を撮るという隠れた意気込みなのか…。


一階でビルの持ち主ヘオクとビョンスの娘ジョンスが会話する場面で、娘が皆が知っている映画監督の父と自分が知る家での父は違うというのに対し、ヘオクは映画監督のビョンスも家でのビョンスもその時その時で違う顔があるだけで、皆が知るビョンスと本当のビョンスが違うということではないのでは?みたいな話をしてたんだけど、一階から四階までのいろんな顔のビョンスにも同じことが言えるのかなぁと。


まぁ、一番のビックリは、ヘオクに雇ってくれたら一生懸命働きます!大人しいけどやる事はやるタイプなんです!あなたから学んだってずっと言いふらして恩は一生忘れません!みたいに熱弁振るっていた娘のジョンスが、1ヶ月でインテリアの仕事はやめちゃって、済州島でペンションの手伝いしてたって事だけどねっびっくりマーク



普段はあまり好んでは観ないジャンルの映画だったけど、なんてことはない会話とモノクロの映像がいつまでも頭に残るような映画だった。

つらつらと思い出しては、あ〜、あれはこんな意味だったのかなと自分なりに考えたり。

何が正解とかはなくて、それぞれによって解釈は違っていて良いのかなと。


クォン・ヘヒョ氏がインタビューの中でホン監督の映画に共通するエッセンスとは何かを聞かれて、「次にどんなセリフがでてくるのか、どんなシーンになるのか想像できないし、予想は必ず裏切られることになります。でもそれが平凡な日常の真実だと思うんですよ。だって私たちは他人の人生を知らないわけですから。ホン監督が作品の中で見せてくれるのは、他人の人生の真実であるような気がします。」と言ってるんだけど、正にそんな感じの平凡な日常を切り取ったものを覗き見しているみたいな映画だと思った。

平凡な人生には映画やドラマみたいな事件は起こらないからね…。

まぁ実際は、切り取られた部分がこんなにどこもかしこも美しくはないのが、映画っぽいと言えば映画っぽいけどね笑

そういう意味でのリアルさはない。

それこそ人の日常の全部を見せたら大惨事…なこともあるわけで笑ううさぎ


口コミでエンドロールが短いとあったのだが、確かにわたしが今まで見た映画の中でも過去一で短かったびっくり❗️


タイトルのWALK UPとは、エレベーターのない階段で上り下りする建物のことなんだって。

韓国語では탑(塔などの意味があるらしい)という1文字がバーンと映し出されてた。


次は『ポライト・ソサエティ』観に行きたい。