今日1人で出かけた先は、映画館の八丁座。

映画の話の前にまずは映画館の話から…。

見てわかる通り、館内めっちゃ和の素敵な雰囲気。

スタッフさんが全員法被を着ていたり、上映タイトルが筆文字で書かれてたり細部にもこだわりが。

パンフレットを買うと、何と手袋をしてパンフレットを渡してくれましたびっくり

ロビーのソファもゆったり。(何ヶ所かある)


※以下は全て画像お借りしました🙏

映画館の座席はゆったりで、ドリンクを置くスペースも座席の手すり部分じゃなく前部分❗️

最後尾の席はもっとゆったりしたテーブルがあって、まるでカフェのようだったよ〜びっくり

ただ、わたしのような腰痛持ちには、このフカフカのソファはなかなかに腰が沈んで痛みが出たりするので、浅く腰掛けてみたり背筋を伸ばしてみたりと体勢を変えながらの鑑賞になりました💦


併設の『茶論 記憶』もめちゃオシャンティニコニコ

ここで購入した商品を持ち込んでの鑑賞もOK❣️

次に行くことあったら寄ってみたいな〜。

インスタから。


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ここからやっと映画のはなし。

ネタバレありますので注意⚠️

上映されたら絶対観ると決めていた『関心領域』。



平日に行くか迷ったけど、早く観たくて日曜日の今日行って来た。

老若男女、映画好きっぽい人々が沢山来ていた。(おひとり様率も高め❣️)

パンフレットは先に買いたい派。


以下、映画.comより解説引用

「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」のジョナサン・グレイザー監督がイギリスの作家マーティン・エイミスの小説を原案に手がけた作品で、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞。ホロコーストや強制労働によりユダヤ人を中心に多くの人びとを死に至らしめたアウシュビッツ強制収容所の隣で平和な生活を送る一家の日々の営みを描く。

タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉で、映画の中では強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長とその家族の暮らしを描いていく。

カンヌ国際映画祭ではパルムドールに次ぐグランプリに輝き、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞した。出演は「白いリボン」「ヒトラー暗殺、13分の誤算」のクリスティアン・フリーデル、主演作「落下の解剖学」が本作と同じ年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したサンドラ・ヒュラー。


子どもの頃に読んだ『アンネの日記』から始まり、里中真智子の漫画『海のオーロラ』のドイツ編、言わずと知れた名著『夜と霧』、小説、マンガ、映画、ドキュメンタリー、ナチスドイツについてのものをいろいろ見てきたけれど、今回はアウシュビッツの隣に住む家族の暮らしを描いた珍しい視点の映画ということもあって、絶対に映画館で観ようと決めていた。

映画が進むにつれ、これがアウシュビッツ強制収容所長だったルドルフ・ヘスの家庭であることがわかってくる。

ちなみにナチスで総統代理を務めたルドルフ・ヘス⬇️とは別人。

この映画はこっちのルドルフ・ヘスと家族の物語ってことらしい。

映画の中ではルドルフ・ヘスの心情が語られることはなく、淡々と物語が進んでいくんだけど、ところどころにゾワゾワするポイントがあるのよね…。


毛皮のコートを着てポーズを決める奥様。

これ、いずれ死にゆく(もしくは既に亡くなっている)ユダヤ人から奪い取った毛皮のコートなのですよ…真顔

歯磨き粉に隠してあった宝石の話とか、誰それに服(ユダヤ人から奪った) を好きに選ばせたらワンピースを選んだけど、ユダヤ人は細身だからワンピースが裂けたのよ、なんて略奪品にまつわる笑い話をお茶しながら平然とするオクサマ…。

もうこれだけで、ここで普通に生活しているであろうはずの奥さんの感覚が、若干麻痺しておかしな事になってるのが伺える。


扉や窓を閉めても、終始ゴウンゴウンと焼却炉が稼働しているらしき音がしているけど、この奥さんの耳には届いてないっぽい驚き

日常音として耳がシャットアウトしてるのか?

亡くなる人から奪った品々という罪悪感や、死んだ人のものを使うのさ気持ち悪いって感覚がないから、コートのポケットに入っていた口紅も平気で試しちゃう。

そのあとしばらくして、エプロンの端で口紅を拭き取ったのは、彼女にもまだまともな感覚があったからなのか、単純に普段の生活には不要なものだからなのか…?



むかしは今みたいな使い捨て社会じゃなかったにしても、母親も「あのカーテン狙ってたのに!他の人に取られちゃったわ!気に入ってたのに〜」みたいな会話を普通にしているのがなんだかコワイ…。

コワイと言えば、夫婦の子どものうちの一人が、ベッドで眺めたりしているコレクションが銀歯だったりするのです驚き

環境や教育って…大事‼️


かと思えば、夜になるとベッドじゃなくて廊下だったりにしゃがみ込んでジッとしてる子もいたり、この子は何か異常なものを子ども心に感じ取っているのか…。

収容所から聞こえる機械音に混じって、ギャン泣きしている赤ちゃん。←ベビーシッター役?もなぜだか抱かずに放置

このカオスに遊びに来た母親は恐怖を感じたのか、最初は素敵なお部屋や手入れされ花が咲き誇る庭を褒めていたものの、その環境に耐えきれず置き手紙を残して逃げ帰っちゃう。

転属が決まってここを離れようと言う夫のルドルフ・ヘスの方が、まだまともな感覚をギリギリ残しているのかもしれない…。

といっても大量虐殺に加担してるんだから、まともな感覚もクソもないんだけど、いわゆる上からの命令や虐殺に対する大義名分があった場合、それに逆らえる人がどれだけいるのかと考えると、決して他人事ではないのがコワイところ。

自分だってこの奥さんみたいに、コート着てフフンと回転してみたりする可能性だってあるわけで。



映画を観てから本棚から引っ張り出して来た、ルドルフ・ヘスの手記。


映画は完全なノンフィクションではないにしても、手記を読めば映画ではわからない部分がかなり補完はされると思う。


アウシュビッツでの生活や家族について書かれた部分はごくわずかだけど、これを読むと映画と繋がる部分や、映画では分からなかった彼の心情や後悔や仕事に対する苦悩が見て取れる。

(嘘偽りも誇張もなく書いたとはしているが、第三者がこれを読めば、ただの言い訳や都合の良い解釈に思えてしまうような部分もあるにしても)

家族が願いは全て叶うような良い暮らしをしていたことや、奥さんが見事な花壇を持っていたことなど、映画の暮らしぶりとリンクする話も少しだけ記述がある。


他にも、映画の中で使用人がお酒らしきものを注いだグラスをテラスに持って行って置き、大勢の部下を引き連れて来たルドルフ・ヘスがそれを飲むシーンがあるんだけど(ルドルフの誕生日だったぽい)、本を読むといろんな欺きにあって人間不審に陥った彼は、パーティーなどでは敢えてお酒を飲んで明るくフレンドリーに振る舞う事があったらしいので、あー、あのシーンはそれでなのかなと思ったり。

ラスト辺りで、パーティーにいる大勢の人を俯瞰で眺めながら、妻に電話で「ここにいる全員を毒ガスで効率的に殺すには…なんて事を考えながら眺めてたよ。天井が高いから構造的に無理だろうけど」(セリフはうろ覚え)みたいに言うシーンからも、常に仕事のことを考えつつも、彼の人間不信ぶりがこういうセリフに垣間見える気がした。←この場面、けっこう毒吐くね〜なんて思っちゃったのよね


謎の発光するリンゴのシーンは、パンフレットを読んだらあぁそういう意味だったのかと。


映画の中では、荷(と言う表現がされていたけど人間だよね…)を焼却したら次はこっちの炉に熱がいって、最初に使った炉の温度は40℃まで下がるから灰を捨てるのには問題ない〜なんて、新しい焼却炉の構造やいかにこれまでより効率的に荷を処理出来るかについての話なんかも出て来て、あ〜、前に焼却炉のドキュメンタリーも見たなぁと、ドキュメンタリー番組を思い出したり。


映画を観たあとは、ネタバレを含む動画も遠慮なく見られる。


この映画、アカデミー賞の国際長編映画賞の他に音響賞も受賞しているので、映画館で観るのがオススメかなと思う。

冒頭からして、あー、こういう感じなのか…って入りなんだけど(映像流れなくて音だけ聴こえて変化していく。あまりに何も映らない時間が長すぎて、これは狙い過ぎな気がしないでもなかったけど。)、これ配信なら確実に10秒スキップとかする人がいそうだし、細かい音とか、音がどこから聞こえてくるかみたいなのを楽しむには、音響設備がしっかりしてそうな映画館が良さげかなと。

わたしは最後はトイレの混雑を避けるために、エンドロールは途中で席を立って、トイレに一番近いドアの近くから最後まで観たんだけど、まぁ、気持ち悪い音楽というのか音というのか(でも良いなと思ってしまった)、最後まで聴覚にに訴える事へのこだわりを感じた。


とにかく淡々と、起承転結のないホームビデオの繋ぎ合わせを見るかのように話が進んでいくので(実際、カメラをいろんな場所に固定して撮影したらしい)、観る人によっては凄くつまらなく感じる映画かもしれない。

わたしもホロコーストに興味がなければ、退屈な映画だと思うかもしれないし、これを観て不快だったらり複雑な気持ちに多少はなるけど、ゾッとするとかどんなホラー映画より怖いってほどまでの感性は持ち合わせていないかなぁ。


わたしはナチスやホロコートについて描かれた映画や小説を読む時、歴史書や手記を読むのに近い感覚というのか(よほどドラマティックでエンタメに近い感覚で作っているものは除く)、そこに映画としての面白さをあまり求めていない。


教科書を読んで面白い面白くないで評価しないように、この映画も過酷で理不尽な生活を強いられたアウシュビッツの隣では、立場が違うというだけでこうやって平和に暮らしている家族がいたんだな、という史実を映像で観ているような感覚に近い。


あとから監督のインタビューを見て、巧みな語り口を避け事実を提示することに注力したと言う通り、こんな事実があったということをただただ見せつけられた気がした。

ラストシーンでいきなり挟まれる淡々とスタッフが掃除を行う現在の博物館化されたアウシュビッツの映像もだけど、映画だけど長いドキュメンタリー番組を観たようで、まるで当時に本当に暮らしていた人物の暮らしを本当に観たかのような気分になる。

あとから知ったことだけど、登場人物に自分を重ねて見て欲しいという監督の狙いは、見事に果たされたと思う。


「The Zone of Interest」はマーティン・エイミスの小説を原作にしたアメリカ合衆国・イギリス・ポーランド共同製作の歴史・ドラマ映画という事で原作があるんだけど、これがなかな良いお値段(この手の本は手記にしろ研究書にしろ、どれもお値段がそこそこする)でいつか読んでみたいリストに入れておこう。