こんにちは。

東京都議会議員(品川区選出)の

阿部祐美子です。

 

いきなりですが、来年の都立高校入試に、

英語スピーキングテストが加わる計画を

ご存知でしょうか?

 

来年といっても、現中学2年生が

今年秋に受けるテストの結果の利用だし、

申込(&特別措置申請)は7月からなので

もう、目の前に迫っています。

スピーキングテストの導入について都教委は

中学校での「話すこと」の指導の充実と

高校での「使える英語」育成の充実を

目指していると説明しています。

 

「使える英語」、良いですね!

 

でも、具体的な実施方法を見ていると

採点の公平性や透明性から

個人情報の問題、

学校の授業への影響や教育格差まで

さまざまな疑問も浮かび上がってきます。

 

具体的にどんなテストなのか、

詳しく見ていきましょう。

 

1.これまでの経緯

日本の英語を使える英語に、ということで

都教委がスピーキングテストを導入する

方針であることが報じられたのは2017年。

2019年には都教委が導入を正式に発表したものの

昨年には同様の試験を予定していた

大学入試の共通テストで

スピーキングテストが見送られました。

これを受けて都立高校入試でも見送ると

多くの中学校教師の方々は受け止めたそうですが、

都教委ではコロナ禍の2020年に

一部の公立中学校3年生に対してプレテストを実施。

昨年10月秋にはすべての中学3年生約8万人に

プレテストを実施しました。

実施事業者はベネッセです。

 

2 テストの方法と公平性・透明性

テストは各中学校と都立高校を会場に

9月から10月にかけての授業日に実施。

各自が専用タブレット端末とイヤホンマイクを使って

問題を聴き、解答をタブレットに録音します。

 

昨秋行われたテストの内容です↓

 

 

 

 

 

詳しいテスト内容は →東京都教育委員会の専用サイト

 

事業者は音声データをフィリピンに送って

現地で約45日かけて採点され、

生徒には100点を上限とするスコア、

自治体と学校にも

データが返却されました。

 

と書くと簡単なようですが

8万人もの音声データを

公平に評価するのは非常に難しいことです。

けれども採点者が何人くらいいて

どのような評価トレーニングを受けているのか

今のところ明らかになっていません。

 

公表されている採点基準↓


テストの採点結果に対し

情報開示をする仕組みは今のところ無いため、

ブラックボックス化しています。

 

3 入試における配点

入試においては、テストのスコアを

A~Fの6段階にレベル分けし、

A=20点からF=0点まで

4点刻みで点数化して

学力検査と調査書点の合計(1000点満点)に

加点する予定です。

 

現行の都立高校入試では

学力検査5教科計500点を

700点に換算、

調査書9教科計65点を

300点に換算して

合計点で評価しています(複雑ですね…)。

 

この1000点満点の合計点に

スピーキングテスト結果が最大20点

加点されると1020点に。

この新たな20点は、

学力検査での素点14点分、

調査書の数字だけ見れば

例えば数学2→5をひっくり返すほどの

パワーを持っています。

 

また、1点の違いが合否を分ける入試で

100点満点のスコアを、わざわざ

6段階に分けて4点刻みで加点

というやり方も疑問が残ります。

 

テスト自体は、

都立高校受験の有無にかかわらず

都内公立中学校3年生全員が

受けることになっています。

また、私立中学在籍者でも

都立高校受験希望者は

受けることになるとのこと。

とはいえ、テスト後の転入その他

なんらかの理由でテストを受けられない場合は

学力検査での英語の点数に応じて

加点するそうです。

 

4 専門家から疑問の声も

 

導入への課題を交えながら書いてきましたが

このほかにも専門家からはいくつもの

疑問の声が上がっています。

 

・採点基準には「流暢さ」なども含まれており、

英語初学者である中学生へのスピーキングテストは

生徒を委縮させ、英語学習上逆効果ではないか。

・40人学級のままで、英語の授業時数も限られる中

今以上にスピーキング学習に力を入れることは不可能では。

・塾など学校外での英語学習にアクセスできる

経済力、家庭力のある生徒が有利で教育格差が広がる。

・ベネッセという一企業に都内中学生8万人の

住所・氏名・顔写真・成績などの個人情報を毎年

提供し続けなければならないのは問題では。

・試験の実施主体となる同社が試験対策の

各種サービスを販売していることは利益相反では。

・場面緘黙や吃音、発声障害など

言葉に困難に抱える生徒は少なくなく

診断が難しい場合に大きく不利になるのでは。

 

その他、さまざまな疑問が挙がっています。

 

公教育と不可分となる新たな大規模テストは

民間企業の一社独占でなく

独立した機関で行うのが筋だと思います。

たとえ何らかの形で

スピーキングテストを導入するとしても

いきなり高校入試に課すのではなく、

まずは授業へのフィードバックもしながら

テストとしての安定性と信頼性を築いたうえで

入試への活用の是否へと

つなげていくべきなのではないかと

私は思います。

 

さらに言えば、「使える英語」のためには

テストをいじるより前に

英語の授業をどうするかであって、

40人学級のままの語学学習は

限界ではないでしょうか。

 

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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