ブロードウェイのスター、ノーム・ルイスが来日コンサートを開きました。そのステージ評を讀賣新聞に寄稿しました。(紙面右コラム)
ノームは「オペラ座の怪人」ニューヨーク公演でファントム役を演じた唯一のアフリカ系アメリカ人の俳優です。
なおノーム・ルイスは、6月再来日して「ミュージカル・ミーツ・シンフォニー2018」(6月7、8日 Bunkamuraオーチャードホール、9日大阪フェスティバルホール)に出演します。
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ポケット一杯、ブロードウェイを詰めて……。そんな心意気がリラックスした立ち姿にもみなぎっていた。現地直送、品数豊富。新旧さまざまなミュージカル・ナンバーを奇術師のように繰り出して見せる。
何より共演者なしのワンマン・ショウなのが嬉しかった。ひときわ高いその歌唱力と親しみやすい人柄を味わい尽くせたからだ。
ノーム・ルイスは、1988年から続演中の「オペラ座の怪人」ニューヨーク公演で、ファントム役を演じた只ひとりのアフリカ系アメリカ人俳優として知られる。この公演でもその持ち歌「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」を情緒てんめん、天まで届けとばかり絶唱した。力強く艶やかなバリトンがアンドリュー・ロイド=ウェバーの甘美な旋律によく似合う。
一方、彼は「レ・ミゼラブル」のジャベールを英米双方で演じた芸歴の持ち主でもある。今回はジャベールの「星よ」に続け、ジャン・バルジャンの「彼を帰して」を歌った。相対する役柄の要となる曲と曲の合間を軽くひとっ跳び。それぞれの曲の際立たせ方を含め、その技量に目を見張った。
「ポーギーとベス」の「アイ・ガット・プレンティ・オ・ナッティン(くたびれもうけ)」で試みた仕掛けにも驚いた。オペラとミュージカルと両方の唱法をまぜこぜにして歌ってのけたのだ。遊び心満点。本来オペラだが、時にはミュージカルとしても上演される「ポーギーとベス」の特質が、いっきょに露になった。
アンコールは「みんなひとりじゃない」(「イントゥ・ザ・ウッズ」)「輝く星座」(「ヘアー」)で締めた。この選曲にミュージカル・ファンへの〝世界はひとつ〟という呼び掛けを見出そうとするのは思い過ごしか。
硬軟、強弱を弁えたジェームス・サンプリーナーのピアノ伴奏にも秘やかな拍手を贈る
(4月20日、大手町よみうりホール)