まぎれもなく和田アキ子には〝歴史〟がある。デビュー50周年記念コンサート(11月27日、NHKホール)を聴きながらしみじみそう感じた。

 

 その歴史とは彼女の個人史でもあるが、音楽界、芸能界全体のそれでもある。和田のレコード・デビューはオフィシャル・ブログにも記されているように、〈1968年10月25日、「星空の孤独」〉だが、私は特に〈RCAレーベル邦楽アーチスト第1号〉(「ホリプロ50年史あなたに逢えて、よかった」)だった点に注目したい。

 

 その前年、初の日米合弁音楽産業CBS・ソニーが設立される。CBSのライバルRCAとレーベル契約を結んでいた日本ビクターも、うかうかしていられない。急遽、国内での新人スカウトに熱を入れることになる。その結果、和田にもチャンスが巡って来たというわけだ。

 

 先の「ホリプロ50年史」には和田は〈大阪にあるゴーゴー喫茶でエルヴィス・プレスリーを熱唱中にスカウトされた〉と記されている。いわずもがなプレスリーはRCAの大看板である。RCA、プレスリー、和田を繋ぐ見えない糸があったのかもしれない。

 

 ちなみにRCA邦楽部門から世に出た人気歌手には和田のほか、西城秀樹、内山田洋とクールファイブらがいる。

 

 今回のコンサートで和田は、全21曲の1曲1曲、いや1節1節に心底から情感を込め歌っていた。まず声の瑞々しいこと。張りのある高音、ドスの効いた低音ともに揺るぎない。更にそのふたつを自由自在に使い分ける。その歌唱力は巧拙という段階を遥かに超え、年季の入った芸に見事昇華していた。

 

 彼女の歌手人生は超特大ヒットに恵まれたわけではない。しかし、いくつもの佳曲と巡り逢え、しあわせな半生といえるのではないか。「どしゃぶりの雨の中で」「笑って許して」「あの鐘を鳴らすのはあなた」「だってしょうがないじゃない」「今あなたにうたいたい」等々…。

 

 ジャズ、ソウルの新旧ナンバーも何曲か歌った。リズム&ブルースにとり憑かれた10代から現在に至る回路が透けて見える。これまた彼女の〝歴史〟の一部だ。

 

 和田アキ子というと〝歌の人〟と同時に〝語りの人〟でもある。つい、わさびの利いたひとことを期待したくなる。今回は晴れの記念の舞台を意識してか、やや抑え気味だったが、それでもその日の観客がどこまでアデルを知っているか〝客いじり〟をするあたり、大いに本領を発揮していた。

 

 全体的な演出面ではバックにさまざまな過去の映像を映し出す試みが、生の本人とよくマッチして効果的だった。

 

 改めてアッコ、50周年おめでとう!

 

  (オリジナル コンフィデンス  2017/12/25号 コラムBIRD’S EYEより転載)

 

                                       当日、終演後楽屋にて