バーヨーク が著者の一人として名を連ねる。その本の裏表紙。後方右がバーヨーク ・リー。

 『コーラスライン』秘話が綴られています。

 

  NHKBS1のスポ根番組?『奇跡のレッスン』が舳先の向きをちょっと変えミュージカルにとり組んだ。ブロードウェイから女優/演出・振付家バーヨーク・リーを招き、神奈川県立大船高校演劇部の生徒たちを特訓したのだ。

 

 好企画。3部、3時間とやや長尺の番組になったものの、画面から教える側、教えられる側双方の汗が飛んで来るような熱気あふれる番組に仕上がった。

 

 『奇跡のレッスン「ミュージカル編バーヨーク・リー(アメリカ)」(10月22日放映、11月30日 午後11:00再放映)である。

 

 バーヨークはあの『コーラスライン』のオリジナル版で中国系ダンサー、コニー役を演じた。この作品の生みの親マイケル・ベネットの信頼厚く、2006年、ブロードウェイ再演時にはrecreated byという肩書きで振付を受け持っている。地味ながらこの道の超ヴェテラン。トニー賞特別賞受賞者でもある。

 

 バーヨーク・リーは、ことし70歳。中国人の父、ロシア人の母を持つ。5歳のとき、『王様と私』初演の子役のひとりに選ばれる。しかし有色系、背が147センチ止まりだったため苦難の道を歩む。それだけに「いつも希望を」と生徒たちを鼓舞する彼女の言葉には、ひときわ説得力があった。

 

 稽古前の準備体操では10代の生徒たちより足がぴーんと伸びている。プロはいくつになってもプロだ。

 

 バーヨークはヴォーカル・コーチ兼指揮者のマイケル・ラヴィーンとともに大船へやって来た。まずオーディションをして28名を選ぶ。1日9時間、7日間の特訓。再現するのは『コーラスライン』の僅か4分のハイライト場面だが、全員が歌い踊り科白を喋らなくてはならず、彼女と生徒たちの真剣勝負が続く。

 

 周知のように『コーラスライン』は、バック・ダンサーたちの実体験を素材にマイケル・ベネットが作り上げたミュージカルである。作品の一部にはバーヨークの実人生のエピソードも含まれている。

 

 ベネットがバーヨークらに問い掛けたように、彼女は生徒たちひとりひとりに実生活について質問を繰り返す。なにか不満を表現しなくてはならないときには、学校、家庭での不満を思い起こさせ、そのふたつを重ね合わせるよう演技指導をする。生徒たちの演技だけでなく内面にも変化が起こる有様が見てとれる。

 

 最後の段階で彼女がおこなうダンス・クリーニングというレッスンがとても興味深かった。無駄を削ぎ落しすっきりした仕上がりを得るための作業である。

 

 今回は高校生のための特別授業だったが、本来おこなわれるべきはプロ俳優対象の特訓かも。是非実現を。

 

         (オリジナル コンフィデンス  2017/11/27号 コラムBIRD’S EYEより転載)

 

『コーラスライン』ブロードウェイ・オリジナル・キャストとして
一躍脚光を浴びた頃のバーヨーク ・リー(前列)。

Robert Viagas,Baayork Lee,Thommie Walsh

「On The LINE,The Creation Of A Chorus LINE」より。

Photo By Martha Swope
 

NHK BS番組詳細(再放送)は下記にアクセスの上、ご参照ください。

http://www4.nhk.or.jp/wonderlesson/2/