8月開幕のミュージカル『アナ雪』への期待と不安
超ヒットとなった映画『アナと雪の女王』(2013)のライヴ・ミュージカル化がいよいよ具体的に動き出した。プレヴュウ公演はデンヴァーでおこなわれる(8月17日~10月1日)。ブロードウェイ入りは18年3月を予定している。
映画は全世界で12億7400万ドル、日本だけで254億8000万円の興行収入を上げた。これほどのソフトはディズニーだってそう手にし得るわけではない。強力なコンテンツの再利用、再々利用はディズニーのお家芸だけに目が離せない。今回は会長兼CEOボブ・アイガー自ら陣頭指揮に当たっている。
実はディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーで、すでに去年5月からテーマパーク向きにアレンジされたショウが上演され、人気を集めているという。
映画『アナ雪』の大当たりはクリエイティヴ・チームの総合力の賜物だが、そのなかにあって、ソングライター・カップル、ロバート・ロペス、クリスティン・アンダーソン=ロペスの貢献度がひときわ輝いて見える。「レット・イット・ゴー」の世界的ヒットがなによりその事実を証明していないか。
「映画は7.5曲しかないの。舞台用にもう23曲も書いたわ。材料は沢山あるの。映画で皆さんが知っているモチーフも使っているわ。でもすべての役柄をより深く掘り下げているのよ」と妻クリスティンが語れば、夫ロバートは、「肝心な点は、映画で受けた場面をどうしたら舞台に移し替えられ、観客に同じような迫力を感じてもらえるかだな」 とつけ加えている(「PLAYBILL」ウエブサイト)。
もともとロバートのほうは〝本籍〟ブロードウェイで、『アヴェニューQ』(03)『ブック・オブ・モルモン』(11)と2回もトニー賞ベスト・ミュージカルを受賞している強者だ。舞台で受けるツボをはずすわけがない。
ブロードウェイの劇場は1927年開場のセント・ジェームス劇場が押さえられている。『回転木馬』『王様と私』が初演された由緒ある劇場である。ただ舞台の奥行が足りないため、近く大掛かりな改造工事に入るようだ。劇場主にとっては、ことし20周年を迎える『ライオンキング』並の、あるいはそれを超えるロングランを期待出来るので、それくらいの出費はなんでもないのだろう。
不安はいろいろある。視覚的にあの雪と氷に閉ざされた世界をどう造形するのか。演出家のマイケル・グランデージは科白劇では信頼出来るが、ミュージカルはさて?
とは言え、ことしの世界エンタメ界の目玉のひとつであること間違いなし。
(オリジナル コンフィデンス 2017 1/30号 コラムBIRD’S EYEより転載)
『アナ雪』は映画もDVDも超ヒットだった。
「アナと雪の女王」
MovieNEX発売中、デジタル配信中 ©2017 Disney