やっと来日公演が決まった。なんぼなんでも待たせ過ぎだぜ、おい!
ブロードウェイで開幕したのは、2005年11月6日、もちろん今もロングランを続けている。06年度、トニー賞最優秀ミュージカル賞受賞作。
去年、この舞台をもとねたにしたクリント・イーストウッド監督の映画が公開された。権威あるキネマ旬報ベスト・テン外国映画部門第1位。パブリシティー上の露払い的効果からすれば、映画が先、舞台があとでよかったのかもしれない。
『ジャージー・ボーイズ』は、60~80年代、全盛を極めたザ・フォー・シーズンズのバイオグラフィカル・カタログ・ミュージカルである。彼等のヒット曲を縦横に駆使しつつ、その波瀾万丈の半生を鮮やかに浮かび上がらせる。
「恋はヤセがまん(Big Girls Don’t Cry)」「シェリー(Sherry)」「恋のハリキリ・ボーイ(Walk Like A Man)」「あのすばらしき夜(Oh, What A Night)」「君の瞳に恋してる(Can‘t Take My Eyes Off You)」などおなじみの曲が出てくるわ出てくるわ……。
オン・タイムで彼等の活躍ぶりを知る私たち世代にとって、その楽曲はじゅうぶんノスタルジックである。しかし、ただ単にノスタルジックなのではない。心くすぐる甘美なメロディーと思わず溜め息の出る完璧なハーモニーは、間違いなく世代を超え音楽の好みを超え人々の胸に強く響くことだろう。
『ジャージー・ボーイズ』のジャージーは、ニューヨーク市の中心部マンハッタン地区から見てハドソン川の西側、ニュージャージー州を意味する。この題名を思い切って意訳すれば〝川向うの悪童たち〟ということになる。
そう、『ジャージー・ボーイズ』は、生まれも育ちも川向うの悪がき(今のはやり言葉で言えばヤンキー)たちが、音楽を武器に立ち上がり、グループ内外のさまざまな苦難を乗り越え、全米の人気者になる成長物語である。その物語を押し進める演出たるや、巧みな脚本とよくマッチして一分の隙もない。
これぞブロードウェイでなくては見られない職人芸のなせる業である。
私はこのミュージカルをブロードウェイで二度観劇しているが、二回とも同じような感想にとり憑かれた。それは、この作品だけは日本人キャストによる日本語上演は絶対避けたほうがいいだろうな、という確信に近い思いと言ったらいいだろうか。
本来の意味でのヤンキー気質、すなわちアメリカ白人気質が作品から漂ってこないと、面白くもへったくれもないと思えたからだ。できたら白人気質でもイタリア系アメリカ人気質がそこここに滲み出ていて欲しい。ニュージャージー州はイタリア移民が数多く占める州だし、ザ・フォー・シーズンズの目玉、フランキー・ヴァリらもその系統ですからね。
ところでこの州出身のイタリア系大スターと言えば、ことし生誕100年のフランク・シナトラがいる。『ジャージー・ボーイズ』にはシナトラにあこがれた地元の若者たちの成長譚という側面もあるにちがいない。
ブロードウェイミュージカル『ジャージー・ボーイズ』
東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ)にて
2015年6月25日~7月5日
作曲:ボブ・ゴーディオ 作詞:ボブ・クルー
脚本:デス・マカナフ 振付:セルジオ・トルヒーヨ
※英語上演/日本語字幕あり ※未就学児入場不可
料金(税込):S席13,000円、A席11,000円、B席9,000円
住所:渋谷区渋谷2-21-1渋谷ヒカリエ11F
[問]キョードー東京 0570-550-799
(平日11:00~18:00、土・日・祝10:00~18:00)