『トニー・ベネット&レディー・ガガ/チーク・トゥ・チーク』(ユニバーサルミュージック)が、予想通り評判を呼んでいる。大御所中の大御所と旬のスターの競演盤だから話題にならないわけがない。

 

 年齢的には60歳も離れていて、まるでおじいさんと孫娘のようなふたりが、時には親密に時には丁々発止、デュエットを繰り広げる有様は、なんとも微笑ましい。

 

 発売直後、ビルボード・アルバム・チャートで第1位にランクされた。

 

 この優れたアルバムと同時期の9月末日、もう1枚、超大物のデュエット・アルバムがリリースされている。『バーブラ・ストライサンド/パートナーズ』(SJI)である。もっともこちらは曲によって相手が変わる。

 

 マイケル・ブーブレと「イット・ハッド・トゥ・ビー・ユー」、ビリー・ジョエルと「ニューヨークの想い」、ジョシュ・グローバンと「サムホエア」など。

 

 どの曲もバーブラのヴォーカル全開である。まずはソロ・パートの声の艶、歌唱力の豊かさに陶然となる。

 

 彼女のキャリアで重要な位置を占める「ピープル」「追憶」には、それぞれスティーヴィー・ワンダー、ライオネル・リッチ―とソウル系の歌手を選んでいる。耳慣れた旋律なのに、どこか真新しい響きも工夫されている。ひとつところに踏みとどまらないチャレンジ精神あってこそ、彼女はスターの座を保持し得ているのだろう。

 

 「アイド・ウォント・イット・トゥ・ビー・ユー」ではカントリー歌手のブレイク・シェルトンと、「アイ・スティル・キャン・シー・ユア・フェイス」ではイタリアのテノール歌手アンドレア・ボチェッリと組んでいる。誰とであっても私たちの心を震わせる情緒たっぷりの二重唱を聴かせてくれるのだから、恐れ入ってしまう。

 

 極め付けはエルヴィス・プレスリー「ラヴ・ミー・テンダー」をおいてない。ソロからソロへの受け渡し、重唱部分ともに絶妙と言うほかない息の合いようだ。

 

 原曲がヒットしたのは1956年だから、当然、プレスリーの声は若い。現在のストライサンドの声とミックスすると、姉と弟の二重唱のように聴こえるが、実際にはエルヴィス35年生まれ、バーブラ42年生まれ、彼女のほうが7歳年下ということになる。テクノロジーの進歩恐るべし。

 

 ただしバーブラは、自ら書いたライナーノーツでプロデューサーのウォルター・アファナシエフの名前を挙げ、「ウォルターが発見した、私たち両方のキーをうまく調和させる方法もまた、彼の素晴らしい音楽性を示しています」と記している。プロデューサーの感性も大切ということだ。

 

 ちなみにこのアルバム、チャートではベネット&ガガに続き第2位でした。

 
(オリジナル コンフィデンス 2014/11/24号コラムBIRDS EYEより転載)