アメリカ映画『愛情物語』は、実在した名ピアニスト、エディ・デューチンとその妻との美しい夫婦愛を描いた作品である。映画も当たったが、それ以上に主題曲の「トゥ・ラヴ・アゲイン」がヒットしたものだ。

 

 パイオニア社長、松本誠也さんは先ごろ美恵子夫人の六十歳の誕生パーティーを開いたおり、この名曲に乗って玄人はだしの社交ダンスを披露した。

 

 パートナーは、言わずもがな恵美子夫人である(ちなみに誠也さんは二歳歳上)。

 

 ぴたりと息の合ったダンスぶりに、招かれた友人知人は嘆声を上げたが、夫妻で踊ったことは、かつて一度もないという。社交ダンスは、夫妻の共通の趣味だが、日ごろは技に磨きをかけるべく、共にプロの先生とばかり踊っているからだそうだ。

 

「この日はオーケストラを二つ入れて踊りました。ステレオ効果満点でしたよ」と長年の夢がかなったことに痛く満足している。

 

 松本さんと音楽との接点は、単に社交ダンスだけではない。チャイコフスキー・コンクールから日本のオペラまでクラシックのスポンサーも買って出ている。音楽との付き合いは完全にボーダーレスである。

        (1991年5月19日、産經新聞)

 

(追記)

 松本誠也(1929~99)さんは、もとパイオニア社長・会長。在職中、ステレオ、レーザーディスクの開発と普及に大きな成果を挙げた。レコード会社ワーナー・パイオニア(ワーナーミュージック・ジャパンの前身)の設立にも力を尽くした。

 

 なんどか酒席をともにしたが、明るい人柄でいつも座が楽しく弾んだ。その笑顔が懐かしい。

 

     

          映画『愛情物語』のポスターです。


      「トゥ・ラヴ・アゲイン」はCarmen Cavallaroで決まり。