夜10時からの開演だったので、「ほろ酔い機嫌でどうぞお越しを」と言われているような気分で出掛けた。70~80年代、パルコ劇場の看板公演のひとつだった『ショーガール』(9月14日まで)の復活である。

 

 以前のシリーズでは出演:木の実ナナ、細川俊之、作・演出:福田陽一郎、作詞・訳詞:竜真知子、音楽監督・編曲:宮川泰という布陣だった。それが新シリーズでは次のように変わった。浮き世の流れをまざまざと映し出している。

 

 すなわち、出演:シルビア・グラブ、川平慈英、脚本・作詞・構成・演出:三谷幸喜、作曲・編曲:荻野清子という顔ぶれに相なった。

 

 上演時間は1時間を少しこぼれるくらい。コントをつないだような軽妙で洒落たお芝居にメドレー風のショウ・タイムがプラスされる。全体の構成はほぼ往年の舞台を踏襲している。

 

 新版でいちばん気に入ったのは、SylviaJayというキャストである。おとなのショウを作ろうとしたら、只今現在これ以上のコンビは見つかるまい。

 

 ふたりに共通する最高の美点は、“今を生きる”エンターテイナーの心意気が、歌のひとふし、ひとふし、ダンスのワン・ステップ・ワン・ステップから漂って来ることだ。

 

 やり過ぎず控え目であり過ぎず、なんとほどのよいショウマンシップ!

 

 三谷書き下ろしのお芝居の部分は、私立探偵(川平)、謎めいた依頼人(グラブ)による和風ハードボイルドといったところか。多分に和風なのは、通常公演の日本家屋の舞台装置(松井るみ)を使い回しているせいだ。

 

 ちなみに、普通の時間におこなわれる公演のほうは、同じ三谷幸喜作・演出の『君となら』(9月15日まで)。理髪店一家の茶の間を舞台に、長女の結婚をめぐる抱腹絶倒の大騒ぎが描かれる。出演:竹内結子、草刈正雄、イモトアヤコ、長野里美、長谷川朝晴、木津誠之、小林勝也。

 

 出演者間の巧みな連繋プレイが絶え間なく客席に笑いを呼ぶ。私は、舞台初出演のイモトのコメディエンヌぶりに目を見張った。

 

 ところで新『ショーガール』だが、やはり装置の使い回しは、三谷の才気をもってしても感興をそぐ。

全体の仕上がりも旧シリーズの洗練ぶりには相当距離がある。

 

 次回は装置のないステージ上でグラブ、川平がなにものにも邪魔されずに伸び伸びと歌い踊る姿を見てみたい。

 

(『君となら』は8月12日、『ショーガール』は8月21日、パルコ劇場にて所見。)

 

 

『ショーガール』の川平慈英、シルビア・グラブ

                                 撮影:阿部章仁 

 

左より、『君となら』の小林勝也、草刈正雄、竹内結子、イモトアヤコ。 
 

                    撮影:阿部章仁

同じ公演の竹内、イモト。
 
                   撮影:阿部章仁