クリント・イーストウッド監督が只者じゃないことはじゅうぶん承知していたが、最新作『ジャージー・ボーイズ』でその感をいっそう深くした。クリントがブロードウェイ・ミュージカルの映画化を手掛けるんだって、ちょっと違うんじゃないの、この企画が発表になったとき、誰もがそう思ったにちがいない。

 

 片や、男の生きざまを主題にさまざまな人物をリアルに描いて来たベテラン映画監督である。一方、ミュージカルは、限られた空間のなかで歌とダンスを用いて、ともするとファンタジーに傾きがちな物語を繰り広げる。その双方の違いに多くの人たちが気づいていたからだ。

 

 私もそう推測したひとりだった。

 

 ところがドッコイ、仕上がった映画は、これまでのミュージカル映画とはまったく異なるだけではない。驚くほど、クリントの“男の世界”に符合しているではないか。

 

 そもそも舞台版からして『ジャージー・ボーイズ』は、ニュージャージー州出身で、60年代に「シェリー」「君の瞳に恋してる」などの一大ヒット曲を放った4人組コーラス、ザ・フォー・シーズンズの栄枯盛衰の物語である(2006年トニー賞ベスト・ミュージカル受賞作)。

 

 原作そのものがイーストウッド監督好みのリアルな男たちの物語だったんですよね。彼等よりやや年配のクリントは、ザ・フォー・シーズンズの全盛期もその後の離合集散ぶりもしっかりウォッチして来たはずだ。もとがミュージカルだろうがなかろうが、クリントが食指を動かしたのは、当然のなりゆきだったわけだ。

 

 あの突拍子もないファルセットが売りものだったフランキー・ヴァリは、ブロードウェイ・オリジナル・キャストのジョン・ロイド・ヤングが演じる。他の3人にも適役の俳優たちがそろった。

 

 最終場面、“ロックの殿堂”入りした4人が、恩讐を越え一堂に集まる光景は、ひときわ感じ入るものがある。

 

                                    

映画のなかのザ・フォー・シーズンズ



     撮影中のイーストウッド監督と俳優たち



        『ジャージー・ボーイズ』

9月27日(土)より
丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他、全国ロードショー
 

オフィシャルサイト:http://www.Jerseyboys.jp

配給:ワーナー・ブラザース映画

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