あるBSテレビ番組で越路吹雪を特集することになり取材の依頼がありました。手元の古い資料(LPやパンフレット)をごそごそと捜していたら、懐かしい写真が見つかりました。レアなものなので公開したいと思います。

 ①越路のサイン入りポートレート。献辞は「あべねえさん」、サインは「河ちゃん」と読めます。通称コーちゃんは本名の河野美保子から来ていることが証明されようというものです。

 いつどこでもらったか記憶なし。写真がちゃんと台紙に納まっているところを見ると、彼女のほうが用意していて、私が楽屋を訪れたときかなにかにプレゼントしてくれたのでしょう。



 

 ②ブロードウェイ・パレス劇場。1972年1月。越路の「アプローズ」主演が決まり、本場の舞台を見学に出掛けたとき、その楽屋で。

 左より山田卓(振付)、浅利慶太(演出)、アン・バクスター、越路、内藤法美(音楽監督)、小生。



「アプローズ」は、映画「イヴの総て」をミュージカル化した作品で、1970年3月30日開幕しました。オリジナル・キャストの主演はローレン・バコール。最初、私はバコールで見て越路にぴったりの役柄だと思ったのですが、二度目のときはアン・バクスターが演じていました。バクスターも見応え十分でした。

「イヴの総て」は、ブロードウェイの大女優マーゴ・チャニングが可愛がっていた新人女優イヴ・ハリントンにその地位を奪われるという物語です。いわゆる飼い犬に手を噛まれるってやつです。映画で小娘女優を演じたアン・バクスターが舞台では大女優役のほうをやったので、結構話題になったものでした。

 ちなみにアン・バクスターは1923年生まれ、越路吹雪は24年生まれ。この写真の当時、アン48歳、コーちゃん47歳でした。ふたりとも年齢以上におとなの女優っていう雰囲気を漂わせています。

 撮影はマガジンハウス・ニューヨーク駐在だった間瀬明さん。のちに彼はF1専門のカメラマンとして世界的に知られる存在となりました。

 

 

③私とのツーショット。場所は日生劇場のどこかか。年月日不明。
「アプローズ」観劇よりあとだと思われます。彼女が愛煙家だった証拠写真のような一枚です。

 撮影は松本徳彦さん。彼以上に越路を被写体にしたカメラマンはいません。なんども越路吹雪展を開いているし、写真集「越路吹雪 愛の讃歌」(淡交社)も出版しています。

 全身にオーラがみなぎっていた大エンターテイナー越路吹雪がこの世を去ったのは、1980年11月7日のことでした。随分昔のことのようにもきのうのことのようにも思えます。