草笛光子主演の『6週間のダンスレッスン』初日間近か
今、草笛光子は最高に輝いている。4月10日の紀伊國屋演劇賞他の受賞を祝う会でそう感じた。同い年で古い付き合い(初対面は1956年7月、日劇「夏のおどり」の楽屋)という諠みもあり、久しぶりにお喋りをしたくなり、『6週間のダンスレッスン』の総仕上げに熱のこもる二子玉川の稽古場まで会いに出掛けた。
『6週間のダンス』(作:リチャード・アルフィエリ、訳:常田景子、演出:西川信廣、振付:中尾謙之)は、ふたり芝居である。68歳の未亡人リリー(草笛)は、退屈な人生のうさ晴らしにと社交ダンスのレッスンを受け始める。相手の教師マイケルは45歳(斉藤直樹、星智也のダブルキャスト)、年齢も離れているし、生活環境も大きく違い、当然のようにさまざまなトラブルが巻き起こる・・・・・。
その出来事のなか、第1週スウィングからタンゴ、ワルツ、フォックストロット、チャチャチャ、そして第6週のコンテンポラリー・ダンスまでレッスンは粛々とではなかった、大いに賑々しくかまびすしく進んでいく。
今回、相手役がふたりになったのは、オーディションで最後まで残った斉藤、星がともに捨てがたかったからだ(江口剛史プロデューサー)。見るほうには比較する楽しみが加わったが、草笛自身は稽古回数が倍になったから、大変にちがいない。
ちなみに2006年の初演時の相手役は今村ねずみ、そのあと太川陽介が引き継いだ。
2012年、太川との共演の際は東北の被災地巡演もおこなった。アンコールで観客たちがいっしょに肩を揺すってくれているのを目の当たりにして、胸が熱くなったという。草笛ならではの激励のメッセージを送ることが出来たわけだ。
今回の舞台のための稽古で彼女がとくに気をつけているポイントがふたつある。ひとつ目、彼女のほうがうまく踊ってしまわないこと。SKD(松竹歌劇団)から数々のミュージカル(「ラ・マンチャの男」「シカゴ」「王様と私」他多数)へと踊りはみっしり年季を積んでいる。しかし、この役ではあくまで生徒なのだから。
ふたつ目、ダンスとほかの演技、科白といかにつなげるかが課題だ。
「レッスンを受けている最中、電話がかかって来るとか、しょっちゅう中断されるんです。踊りからお芝居へどう自然に持っていくか、そこが結構難しいのよ」
なるほどね。丸々1曲踊るのはラストの曲だけなのだそうだ。
もともと『6週間のダンスレッスン』は、2001年、ロサンゼルスの非商業劇場ゲフィン・プレイハウスから生まれた上質の作品である。しかし、アメリカではもうひとつ評判にならなかった。草笛ほどぴったり適役の女優が見つからなかったせいかもしれない。
逆に草笛光子にとっては、じゅうぶんに芸歴を重ねたのちに、年齢、芸風、芸域すべて彼女にぴったりの役に出会えたわけで、これは、とても幸運なことではないだろうか。
5月30日、銀座博品館劇場でのプレヴュウ公演初日までもう幾日もない。
http://theater.hakuhinkan.co.jp/pr_2014_05_30