百花繚乱、宝塚卒業生のスターたち
１００周年の慶事に湧く宝塚歌劇にふさわしいアルバムがリリースされました。
「宝塚卒業生＜伝説の歌声＞（ビクター）、「同＜魅惑の歌声＞」（ユニバーサル）です。両方ともＣＤ２枚組みで、葦原邦子、小夜福子、糸井しだれら戦前派から、戦中派の深緑夏代、越路吹雪、宝とも子らをはさみ、戦後派の上月晃、真帆志ぶき、那智わたる、麻実れいら戦後派までスター・オンパレードです。
轟夕起子、月丘夢路、久慈あさみ、淡島千景、乙羽信子ら映画に転身したスターたちの歌声も聴くことが出来ます。
この女優も宝塚か、あの歌手も宝塚かと驚かずにいられません。
以下の文章は、このアルバムのために書いたライナーノーツです（２社共通）。
なお収録曲一覧も添えておきます。
～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆
世界広しと言えども、ひとつの芸能集団でこれほど多くのスターを生んだところはないのではないか。宝塚１００周年を機にもと宝塚スターのヒット曲アルバムが、ビクター、ユニバーサルからそれぞれ異なった内容でリリースされるのは、とても意義のあることだ。
今、その曲目表をじっと眺めていると、歌っているスターたちの顔つきや姿かたちが、おのずと目に浮んで来る。
なかでも越路吹雪が忘れられない。若いときから歌に艶があった。表情に愛敬があふれていた。ミュージカルでも主演を張ったが、シャンソン中心に一ヶ月もワンウーマン・ショウが打てる歌手なんて、あとにも先にも彼女しかいない。
私は、越路がシャンソンの神髄を吸収し得たのは、彼女と宝塚の舞台でコンビだった深緑夏代のお蔭と見る。深緑は、シャンソンをフランス小唄だからと言って変に洒落のめして歌ったりせず、魂の歌として捉え立ち向っていった人だった。
上月晃、麻実れいの歌いぶりにも深緑の影響が滲み出ているのが感じられる。
それにしても上月はもっと長生きして欲しかった。パリの伝統あるレヴュウ劇場フォーリー・ベルジェールで主演歌手の座を務めた実力の持ち主である。越路の後継者というポジションも射程距離にあったのに。
宝とも子は、当時めずらしいラテン音楽専門で、歯切れのいいリズム感と妖艶な舞台姿が今も懐かしい。私は彼女の第１回リサイタルのパンフレットを持っているが、それには１９５２年３月３０日、ヤマハホールと、ある。
宝塚卒業生でジャズ歌手を志した人はあまりいない。朝丘雪路はその例外中のひとりだろう。しかし、芝居はうまいし日舞は出来る、どことなく色っぽいとあって、たちまち売れっ子のマルチタレントになってしまった。今や彼女のジャズはレアものである。
池真理子、生田恵子、服部富子と歌謡曲で名をなした人たちも多いが、共通して舶来の味わいを漂わせている。宝塚卒業生なればこそ。
戦前のスターでは葦原邦子とは付き合いがあった。と言ってもあくまで中原淳一夫人としてのみで、往年の舞台姿は知る由もない。
久慈あさみとはなんどか酒席をともにした。さっぱりした気性の姐御肌の人だった。
歌謡曲も歌ったが、轟夕起子、淡島千景、乙羽信子とともに映画スターの印象が強い。
スクリーン上の久慈、淡島はクール・ビューティ―の典型で、このタイプが大好きな私は、“ご対面”のたびに胸をときめかせたものだ。
現役時代を知るタカラジェンヌでは、『華麗なる千拍子』の寿美花代があでやかなタイツ姿とともに深く思い出に刻み込まれている。男役のトップスターの燕尾服を剥ぐとは、なんと大胆な演出（高木史朗）だったことか。
真帆志ぶき、那智わたる、麻鳥千穂、如月美和子は、私がいちばん熱心に宝塚の舞台を見た当時の輝けるスターたちである。
大階段を下りて来る彼女たちの、あるいは銀橋に立った彼女たちの笑顔は、わが青春と分かち難く結びついている。
鳳蘭は現役時代から腕が立ったし、オーラも放っていた。ミュージカル界のトップ女優たり得たのも不思議ではない。
宝塚とその卒業生たちのお蔭で、日本の芸能界は豊饒になった。同様にわが青春、わが人生もどれだけ稔りあるものになったことか。宝塚に心よりお礼を言いたい。
宝塚卒業生＜魅惑の歌声＞
ビクター
Disc 1
1 庭の千草 / 葦原 邦子
2 さようなら / 葦原 邦子
3忘れじの歌 (アニー・ローリー) / 葦原 邦子
4思い出 / 葦原 邦子
5落葉の丘に / 葦原 邦子
6三人仲よく / 小夜 福子／岸井 明／灰田 勝彦
7君と別れて / 一色皓一郎／池 マリ子
8千代の歌 / 月丘 夢路
9 また逢う日まで / 糸井 しだれ
10去りゆく君 / 糸井 しだれ
11 オランダ娘 / 星影 美砂子
12銃後女学生の歌 / 銀 鈴音／香久美 ひかる
13三匹猿 / 星影 美砂子／花村 由利子／南 朝緒
太平洋行進曲 / 宝塚音楽歌劇学校・花組生徒
14 （水産日本）
15 （輝く海軍)
チェリー・ブロッサム / 小夜福子と渡米親善使節団
16 (一)序曲
17 (二)お江戸日本橋、さくら幻想曲、さくらさくら
18 (三)大漁踊り、安木節
19 (四)宝塚音頭
20 (五)素敵なビア・ガーデン
21 (六)エコー（こだま）
Disc 2
１ 処女峰 /乙羽 信子
2 嫁ぎ行く日のタンゴ /乙羽 信子
3 雨のコスモス / 乙羽 信子
4女という城 / 乙羽 信子
5たそがれのワルツ / 乙羽 信子
6大江戸風流娘 / 月丘 夢路
7ブンガワン・ソロ / 久慈 あさみ
8女豹の地図 / 久慈 あさみ
9霧の港のリル / 久慈 あさみ
10霧降る街角 / 久慈 あさみ
11午前零時の鐘は鳴る / 久慈 あさみ
12女ひとりのブルース / 轟 夕起子
13青いセーター / 轟 夕起子
14君を呼ぶシャンソン / 轟 夕起子
15恋のダリヤ / 服部 富子
16霧のサンフランシスコ / 服部 富子
17雨のわすれなぐさ / 服部 富子／大野 一子／生田 恵子
18黒いドレスの女 / 服部 富子
19青いリボン白いリボン / 淡島 千景
20東京ティティナ / 生田 恵子
21白樺の雨 / 宝 とも子
22君慕うワルツ / 宝 とも子
23巴里の風船売り / 宝 とも子
宝塚卒業生＜魅惑の歌声＞
ユニバーサル
Disc 1
1.ビギン・ザ・ビギン / 越路吹雪
2 国境の南 / 越路吹雪
3 悲しみよこんにちは / 深緑夏代
4 パリの夜 / 深緑夏代
5 恋がほしいの / 寿美花代
6 シング シング シング / 朝丘雪路
7 いとしのヴァレンタイン / 朝丘雪路
8 想い出のサンフランシスコ / 朝丘雪路
9 アイ・ラヴ・パリ / 朝丘雪路
10 ラ・ビ・アン・ローズ / 麻実れい
11 ラストダンスは私に / 麻実れい
12 リリーマルレーン / 麻実れい
13 アマリア / 一路真輝
14 月の詠唱 / 一路真輝
15 月に住んでいる男 / 鳳蘭
16 誰もいない海 / 杜けあき
17 じらさないで / 安寿ミラ
18 群衆 / 大浦みずき
19ケ・サラ / 大浦みずき
20 幸福を売る男 / 越路吹雪
Disc 2
1 すみれの花咲くころ / 越路吹雪
2 いかだ流し / 越路吹雪
3 パリメドレー / 越路吹雪
4 素晴らしき人生 / 上月晃
5 フランシス・レイ メドレー / 上月晃
6 パダン・パダン / 上月晃
7 水に流して / 上月晃
8 愛の讃歌 / 深緑夏代
9 ジプシーの恋唄 / 深緑夏代
10 私の神様 / 深緑夏代
11 知らない街 / 深緑夏代
12 ルシアン / 深緑夏代
13 初めてのランデブー(麻鳥千穂)～パリ野郎(那智わたる)
14 そして今は / 麻鳥千穂
15 ヴァレンティーナ(真帆志ぶき)～ピル・ピル・エ(コーラス)
16 ハロー・ドリー(真帆志ぶき)～ひとさじの砂糖(如月美和子)
17 花はさくら~花の都の宝塚(コーラス)
18 ウェディング・ベルが盗まれた / 那智わたる、如月美和子、麻鳥千穂
19 花の音頭(コーラス)
「宝塚卒業生＜伝説の歌声＞（ビクター）、「同＜魅惑の歌声＞」（ユニバーサル）です。両方ともＣＤ２枚組みで、葦原邦子、小夜福子、糸井しだれら戦前派から、戦中派の深緑夏代、越路吹雪、宝とも子らをはさみ、戦後派の上月晃、真帆志ぶき、那智わたる、麻実れいら戦後派までスター・オンパレードです。
轟夕起子、月丘夢路、久慈あさみ、淡島千景、乙羽信子ら映画に転身したスターたちの歌声も聴くことが出来ます。
この女優も宝塚か、あの歌手も宝塚かと驚かずにいられません。
以下の文章は、このアルバムのために書いたライナーノーツです（２社共通）。
なお収録曲一覧も添えておきます。
～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆～★～☆
世界広しと言えども、ひとつの芸能集団でこれほど多くのスターを生んだところはないのではないか。宝塚１００周年を機にもと宝塚スターのヒット曲アルバムが、ビクター、ユニバーサルからそれぞれ異なった内容でリリースされるのは、とても意義のあることだ。
今、その曲目表をじっと眺めていると、歌っているスターたちの顔つきや姿かたちが、おのずと目に浮んで来る。
なかでも越路吹雪が忘れられない。若いときから歌に艶があった。表情に愛敬があふれていた。ミュージカルでも主演を張ったが、シャンソン中心に一ヶ月もワンウーマン・ショウが打てる歌手なんて、あとにも先にも彼女しかいない。
私は、越路がシャンソンの神髄を吸収し得たのは、彼女と宝塚の舞台でコンビだった深緑夏代のお蔭と見る。深緑は、シャンソンをフランス小唄だからと言って変に洒落のめして歌ったりせず、魂の歌として捉え立ち向っていった人だった。
上月晃、麻実れいの歌いぶりにも深緑の影響が滲み出ているのが感じられる。
それにしても上月はもっと長生きして欲しかった。パリの伝統あるレヴュウ劇場フォーリー・ベルジェールで主演歌手の座を務めた実力の持ち主である。越路の後継者というポジションも射程距離にあったのに。
宝とも子は、当時めずらしいラテン音楽専門で、歯切れのいいリズム感と妖艶な舞台姿が今も懐かしい。私は彼女の第１回リサイタルのパンフレットを持っているが、それには１９５２年３月３０日、ヤマハホールと、ある。
宝塚卒業生でジャズ歌手を志した人はあまりいない。朝丘雪路はその例外中のひとりだろう。しかし、芝居はうまいし日舞は出来る、どことなく色っぽいとあって、たちまち売れっ子のマルチタレントになってしまった。今や彼女のジャズはレアものである。
池真理子、生田恵子、服部富子と歌謡曲で名をなした人たちも多いが、共通して舶来の味わいを漂わせている。宝塚卒業生なればこそ。
戦前のスターでは葦原邦子とは付き合いがあった。と言ってもあくまで中原淳一夫人としてのみで、往年の舞台姿は知る由もない。
久慈あさみとはなんどか酒席をともにした。さっぱりした気性の姐御肌の人だった。
歌謡曲も歌ったが、轟夕起子、淡島千景、乙羽信子とともに映画スターの印象が強い。
スクリーン上の久慈、淡島はクール・ビューティ―の典型で、このタイプが大好きな私は、“ご対面”のたびに胸をときめかせたものだ。
現役時代を知るタカラジェンヌでは、『華麗なる千拍子』の寿美花代があでやかなタイツ姿とともに深く思い出に刻み込まれている。男役のトップスターの燕尾服を剥ぐとは、なんと大胆な演出（高木史朗）だったことか。
真帆志ぶき、那智わたる、麻鳥千穂、如月美和子は、私がいちばん熱心に宝塚の舞台を見た当時の輝けるスターたちである。
大階段を下りて来る彼女たちの、あるいは銀橋に立った彼女たちの笑顔は、わが青春と分かち難く結びついている。
鳳蘭は現役時代から腕が立ったし、オーラも放っていた。ミュージカル界のトップ女優たり得たのも不思議ではない。
宝塚とその卒業生たちのお蔭で、日本の芸能界は豊饒になった。同様にわが青春、わが人生もどれだけ稔りあるものになったことか。宝塚に心よりお礼を言いたい。
宝塚卒業生＜魅惑の歌声＞
ビクター
Disc 1
1 庭の千草 / 葦原 邦子
2 さようなら / 葦原 邦子
3忘れじの歌 (アニー・ローリー) / 葦原 邦子
4思い出 / 葦原 邦子
5落葉の丘に / 葦原 邦子
6三人仲よく / 小夜 福子／岸井 明／灰田 勝彦
7君と別れて / 一色皓一郎／池 マリ子
8千代の歌 / 月丘 夢路
9 また逢う日まで / 糸井 しだれ
10去りゆく君 / 糸井 しだれ
11 オランダ娘 / 星影 美砂子
12銃後女学生の歌 / 銀 鈴音／香久美 ひかる
13三匹猿 / 星影 美砂子／花村 由利子／南 朝緒
太平洋行進曲 / 宝塚音楽歌劇学校・花組生徒
14 （水産日本）
15 （輝く海軍)
チェリー・ブロッサム / 小夜福子と渡米親善使節団
16 (一)序曲
17 (二)お江戸日本橋、さくら幻想曲、さくらさくら
18 (三)大漁踊り、安木節
19 (四)宝塚音頭
20 (五)素敵なビア・ガーデン
21 (六)エコー（こだま）
Disc 2
１ 処女峰 /乙羽 信子
2 嫁ぎ行く日のタンゴ /乙羽 信子
3 雨のコスモス / 乙羽 信子
4女という城 / 乙羽 信子
5たそがれのワルツ / 乙羽 信子
6大江戸風流娘 / 月丘 夢路
7ブンガワン・ソロ / 久慈 あさみ
8女豹の地図 / 久慈 あさみ
9霧の港のリル / 久慈 あさみ
10霧降る街角 / 久慈 あさみ
11午前零時の鐘は鳴る / 久慈 あさみ
12女ひとりのブルース / 轟 夕起子
13青いセーター / 轟 夕起子
14君を呼ぶシャンソン / 轟 夕起子
15恋のダリヤ / 服部 富子
16霧のサンフランシスコ / 服部 富子
17雨のわすれなぐさ / 服部 富子／大野 一子／生田 恵子
18黒いドレスの女 / 服部 富子
19青いリボン白いリボン / 淡島 千景
20東京ティティナ / 生田 恵子
21白樺の雨 / 宝 とも子
22君慕うワルツ / 宝 とも子
23巴里の風船売り / 宝 とも子
宝塚卒業生＜魅惑の歌声＞
ユニバーサル
Disc 1
1.ビギン・ザ・ビギン / 越路吹雪
2 国境の南 / 越路吹雪
3 悲しみよこんにちは / 深緑夏代
4 パリの夜 / 深緑夏代
5 恋がほしいの / 寿美花代
6 シング シング シング / 朝丘雪路
7 いとしのヴァレンタイン / 朝丘雪路
8 想い出のサンフランシスコ / 朝丘雪路
9 アイ・ラヴ・パリ / 朝丘雪路
10 ラ・ビ・アン・ローズ / 麻実れい
11 ラストダンスは私に / 麻実れい
12 リリーマルレーン / 麻実れい
13 アマリア / 一路真輝
14 月の詠唱 / 一路真輝
15 月に住んでいる男 / 鳳蘭
16 誰もいない海 / 杜けあき
17 じらさないで / 安寿ミラ
18 群衆 / 大浦みずき
19ケ・サラ / 大浦みずき
20 幸福を売る男 / 越路吹雪
Disc 2
1 すみれの花咲くころ / 越路吹雪
2 いかだ流し / 越路吹雪
3 パリメドレー / 越路吹雪
4 素晴らしき人生 / 上月晃
5 フランシス・レイ メドレー / 上月晃
6 パダン・パダン / 上月晃
7 水に流して / 上月晃
8 愛の讃歌 / 深緑夏代
9 ジプシーの恋唄 / 深緑夏代
10 私の神様 / 深緑夏代
11 知らない街 / 深緑夏代
12 ルシアン / 深緑夏代
13 初めてのランデブー(麻鳥千穂)～パリ野郎(那智わたる)
14 そして今は / 麻鳥千穂
15 ヴァレンティーナ(真帆志ぶき)～ピル・ピル・エ(コーラス)
16 ハロー・ドリー(真帆志ぶき)～ひとさじの砂糖(如月美和子)
17 花はさくら~花の都の宝塚(コーラス)
18 ウェディング・ベルが盗まれた / 那智わたる、如月美和子、麻鳥千穂
19 花の音頭(コーラス)