いよいよ華やぐトニー・ベネット | 安倍寧オフィシャルブログ「好奇心をポケットに入れて」Powered by Ameba

いよいよ華やぐトニー・ベネット

 なんというあでやかさ、若々しさだろうか。
1927年産のイタリア・ワイン(寝かされていた場所は北米だが)だから、少しぐらいへたっていても仕方ない、賞味すべきは枯淡の味わいのつもりだったのに、どうしてどうして…。

 いよいよ華やぐのちなりけり。

 親分フランク・シナトラが自らを棚上げにして「最高の歌手…」と持ち上げるイントロダクション(もちろん録音)に乗って、トニー・ベネットは足どりも軽く颯爽と登場した。

 「ウォッチ・ホワット・ハップンズ」から「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」まで全22曲。時間にして1時間10分ほどか。ピアノ、ベース、ギター、ドラムスのカルテットを従えて淀みなく歌い継いでいく。構成と編曲の妙がそこここに光る。

 私は、ほどよくジャズのスパイスを利かせた新旧スタンダード・ナンバーに心が躍り胸が締めつけられた。
「メイビー・ジス・タイム」「アイ・ガット・リズム」「バット・ビューティフル」「ザット・オールド・マジック」「スマイル」などなど。

 トニー・ベネットのジャズ・ヴォーカルは、これがジャズだという押しつけがましさがない。むしろ聴く者を包み込む優しさにあふれている。だからこそ、私たちも知らず知らずのうちに心を開いてしまうのだ。

 そこに私はジャズとエンターテインメントがごく自然に融合する姿を見た。
 
 これは来合わせていたペギー葉山とも意見が一致したことだが、歌詞の明晰さには舌を巻く。私のような英語力の乏しい人間だって意味がわかったような気持にさせられ、嬉しくなってしまう。

 フランク・シナトラの十八番「ワン・フォー・マイ・ベイビー」、親分とはちょっと違う味わいになっているのが興味深かった。
 もうじき午前3時になるというのに、もう一杯飲もうよというこの歌は、シナトラが歌うとただの酔っぱらいの歌になりかねない。しかし、今回のベネットの歌いぶりにはプレイボーイの粋が透けて見えた。

 もしかするとベネットはシナトラを超えたかもしれない。

 (9月7日昼、東京国際フォーラムホールA、「東京JAZZ」にて所見)

 来日したトニー・ベネットについてよりくわしく知りたい方は、こちらをどうぞ。
 http://ameblo.jp/high-hopes/entry-11609516201.html

終演後に舞台裏で撮ったツーショットです。
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