製作母体の富山市民文化事業団は、ことミュージカルに関しては失礼ながら素人(非商業的)?か、せいぜいセミプロ(半商業的)だろう。にもかかわらず、ブロードウェイの超豪華ミュージカル『ハロー・ドーリー!』に挑戦した。しかも日本人キャストによる日本初公演である。常識的に言えば、まあなんと無媒な!
地元で評判を呼んだらしく、余勢を駆って東京にまで遠征して来たので、冷やかし半分、見に出掛けた(8月23~25日、東京芸術劇場プレイハウス、24日夜の部所見)。
『ハロー・ドーリー!』は、登場人物の誰もが結婚にあこがれ、全員その思いを遂げるというハッピーな物語である。私は密かに“婚活ミュージカル”と呼んでいる。ジェリー・ハーマンの音楽が観客の心を鷲づかみにして離さない。
今回の富山発プロダクションは、いわばハッピー・ムードの大盤振る舞いで、私自身、じゆうぶんに高揚感に浸ることが出来た。
いいところを挙げる。
結婚仲介人ドーリーの剣幸、小金持のヴァダゲルダーのモト冬樹、帽子店の女主人の井料瑠美などキャストがそろっている。
アメリカから招聘した演出・振付のロジャー・カステヤーノがきちんと真面目な仕事をしている。
ジェリー・ハーマンの音楽の愉しさがひしひしと伝わって来る。
アンサンブル、オーケストラが精一杯努力している。
最大の盛り上がりが求められるショウ場面に地元、富山工業高校ブラスバンド計40名を投入したのが、とくに素晴らしい効果を挙げていた。
私は、この富山発のミュージカルがほぼ完成品などという気は更々ない。俳優たちは、それぞれの人物像をもっと鮮明に造型して欲しい。スラップスティックな演技、コミカルなダンスなど演出・振付家の要求する水準に達していないと思った。
しかし、なにより嬉しいのは、誰にも楽しめるエンターテイメントを創り出そうという、全員一丸となっての熱意と志が、ひしひしと伝わって来ることだ。
猛暑をやわらげる爽やかな風が富山から吹いて来た…。
この作品については、以前とり上げたこともあります。
http://ameblo.jp/abe-yasushi/entry-11566727071.html