カラオケ、そんなに嫌いなほうではない。ミュージカルに出演している時など、共演者たちと舞台がハネてからよく出掛ける。
 当然、仲間からも来合わせている客からも、やいのやいのと催促される。しかし、そこはスターの貫禄と言おうか、「わたし名前からしてオオトリなんですから」と最後の最後でなければ立ち上がらない。
 
十八番は山本譲二の「みちのくひとり旅」である。♪お前が俺には最後の女…という文句が気に入っていて、ここにくると、ひときわ感情を込めて歌うという。
 宝塚歌劇団にいた独身のころ(離婚して、今ふたたび独身だけれども、だれかボーイフレンドにこのせりふを言ってもらって結婚したかったのだそうだ。

 「男性って、割合、女性の過去をせんさくしたがるでしょ。女性は相手の昔の恋人なんかどうでもいいのよ。自分が最後の恋人であればね」
 この辺は、鳳蘭が中国人で、大陸風におおらかなせいもあるのではないか。

 「ひとつの芝居は終わると、台本、ぜんぶ忘れてしまう。恋だって新しいのが始まればおんなじよ」
 この人、天性の楽天主義者かもしれない。(1990/8/2)

(追記)鳳蘭は、2005年に紫綬褒章を受章。日本のミュージカルを背負って立つ大スターである。