ことしのトニー賞受賞式がおこなわれたのは、6月9日で、場所はニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールだった。日本では6月26日、NHKBSプレミアムがそのゴージャスな舞台を放映したが、なにせ23時45分から2時間半という深夜枠である。

 ブロードウェイ最大のお祭りもNHKには随分コケにされたものだ。視聴率があまり期待出来ないからと、こういうことになったのか?

 私は録画しておいて二度通して見た。ミュージカル候補作品からの抜粋場面がふんだんにあり、生の迫力を大いに楽しむことが出来た。

 正直言って日本の演技者のレベルはまだまだだなあと思わずにいられなかった。

 この賞(ショウでもあるが)の最大の目玉は、ベスト・ミュージカル(最優秀ミュージカル作品賞)である。ことしは4月4日に開幕したばかりの『キンキー・ブーツ』が選ばれた。

 もしこの作品が登場しなかったら、ベスト・ミュージカルはイギリス発の『マチルダ』に持っていかれただろう。そうだと地元の面目丸つぶれになる。ブロードウェイ関係者は胸を撫でおろしたにちがいない。

 物語の舞台こそ、つぶれかかったイギリスの靴屋だが、作り手はアメリカ勢である。とくにブロードウェイ初挑戦のシンディ・ローパーがベスト・オリジナル・スコア(最優秀楽曲賞)に輝いたのは、大きな意味がある。

 ブロードウェイは、新人の、しかもすでにビック・ネームの作詞作曲家を手に入れたわけだから。

 本人自身、歌手以外の活躍の場がぐーんと広がり、アーティスト生命が延びたことを実感しているだろう。

 この手のセレモニーは司会者の腕次第というところが多分にあるが、今回はニール・パトリック・ハリスの口八丁手八丁ぶりに目を見張らされた。有能なライターがついているにせよ、次々と口にするジョークのまあ多彩なこと、達者なこと。

 たとえば『モータウン・ザ・ミュージカル』について。このミュージカルの主人公であり脚本も受け持ったベリー・ゴーディー・ジュニアを名指し、歌に乗せて「ダイアナ・ロスと恋をして、台本まで書いて・・・」とからかうとは、まあ豪胆な!ベリーは音楽業界の恐持てですからね。

 実は、私も冗談、軽口の一部しかわからなかった。全部わかったら、百倍も楽しいでしょうな。

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