ショパンを弾かせたら実力、人気日本一のピアニスト・中村紘子さんによると、フレデリク・ショパンは、ピアニストたる者、声楽家から大いに学ぶべきであるという説を唱えていたそうだ。当然、中村さんもその説に痛く同感するものがあるという。
 
 内に溜めていた音楽をどういうふうに放出したらいいかという点で、声楽家の呼吸のとり方がすこぶる参考になるということらしい。
 
 以前、中村さんはマリア・カラスの公開レッスンを見学したことがあるが、どんなピアノの先生につくよりいい勉強になったということだ。
 
 そんなわけで、日ごろから彼女はあらゆるジャンルの歌手に関心を寄せている。その範囲は、クラシックの声楽家にとどまらず演歌歌手にも及んでいる。演歌系では断然、都はるみだそうだ。
 
 ひとつには、はるみの「北の宿から」が中村さんの十八番、ショパンの「ピアノ協奏曲」第一番ホ短調の主旋律とどことなく似通っているので、近親感を抱くようになったのかもしれない。

 しかし、それだけではない。はるみのメリハリのきいた独特の表現力が中村さんの関心をぐいとひきつけて離さないのではなかろうか。(1990/4/19)