前回の「談四楼が綴った談志の晩年」のなかで、談志お別れの会での石原慎太郎、山藤章二ご両人の追悼の辞について「一読に値する」と書いた。

 全文を知り合いたい向きは、立川談四楼著『談志が死んだ』(新潮社)を手にとっていただきたい、というつもりでそう書いたのだが、その後ネット上で読めることが判明した。

 NHK「かぶん」ブログです。「かぶん」は科学文化部の略らしい。
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/800/104876.html
同ブログ2011年12月23日の記事です。

 慎太郎氏が、談志の死の3日前、喋ることの出来ない師匠に電話を通じ一方的に話しかけたというエピソードが凄絶ならば、山藤氏のピカソを引き合いに出した談志論も迫力満点である。

 「ピカソは新しいジャンルに挑戦すると、たちまち頂点を極める。それで大衆がようやっとついていこうと思うと、次なる峰を目指してもう行動を起こしている。この軌跡が立川談志とカブッてしようがないんですね。」

 ところで山藤章二氏といえば、“昭和・平成の浮世絵師”の異名を奉られている名イラストレーターである。名士の似顔絵を画かせたら、彼の右に出る者はいない。

 絵と文章の両方で風刺を利かせる週刊朝日連載「山藤章二のブラック・アングル」は、この4月26日号でなんと2014回を数える。1976年からの長期連載である。この欄がいかに人気が高いか知れようというものだ。

 人呼んで「週刊朝日をうしろから読ませる男」。「ブラック・アングル」が載っているのが、同誌の最終頁だからだ。

 最近の「ブラック・アングル」でひときわ秀逸だったのは、4月19号(2013回目)の回だろう。テーマは長嶋茂雄、松井秀喜の国民栄誉賞受賞である。

 絵柄は、松井が乗っかった小さな台車を長嶋茂雄が押しているというもの。長嶋の吹き出し(本人の言葉や思いを示しだ部分)にはこう書かれている。
「下記の英文を過去に直せ。」〔問題〕I live in Tokyo.〔長さんの答え〕I live in Edo.」

 松井の吹き出しは、「ボクもギャグライターがほしい!!」

 そこでブラック・アングル氏(すなわち山藤氏)のひとこととして、「数ある長さんの逸話(ミスターエピソード)の中で、私が最高に好きな作品はコレ。場所の名称を過去形にするなんざ、並のセンスじゃありません・・・・」

 長嶋のよく知られる天才的脳天気ぶりを描き出してあまりある。

 山藤さん、これってもちろん創作じゃありませんよね。よこぞこんなエピソードを記憶の引き出しにしまっておき、とっさに引っ張り出して来ましたね。

長嶋、松井をネタにした「山藤章二のブラック・アングル」。
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