黒柳徹子と実在ヒロイン劇の相性 | 安倍寧オフィシャルブログ「好奇心をポケットに入れて」Powered by Ameba

黒柳徹子と実在ヒロイン劇の相性

 なぜか黒柳徹子が舞台で演じて来たヒロインは、実在の人物が多い。しかも、どのお芝居もいずれ劣らずコメディ仕立てである。いいですか、彼女が出演した女性たちをピックアップしてみますよ。

『カラミティ・ジェーン』のタイトル・ロール(米西部開拓史に名を残すガン・ウーマン)、『マスター・クラス』のマリア・カラス(20世紀最大のプリマドンナ)、『喜劇キュリー夫人』のタイトル・ロール(かのノーベル物理学賞、化学賞受賞者)、『マレーネ』のマレーネ・ディートリッヒ(「リリー・マルレーン」でご存知の大スター)、『ブロンドに首ったけ』のメイ・ウェスト(セクシーさで売ったハリウッドの超有名女優。黒柳はウェストと彼女の熱烈な信奉者の二役を演じた)などなど。

 キュリー夫人は真面目一方の科学者だったようにも思えるけれど、彼女をモデルに喜劇が書かれたところを見ると、面白おかしい一面もあったのだろう。

 というわけで、一昨日の当ブログで書いたように、実在した高名な芸能エージェント、スー・メンジャーズをモデルにした新作コメディが、今、ブロードウェイで準備中などという噂を耳にすると、とっさに黒柳徹子向きじゃないかと思ってしまうのです。

 その道の超一流人物というのは、どこか子どもっぽく愛嬌がある。と同時に自信たっぷり、“世界は私が回している”と思い込んでいるところもないではない。そういう二面性が劇作家の創作力を刺激し、更には優れた俳優にその役を演じてみたいと思わせるのではなかろうか。

 実在の人物を基にして、劇作家が虚実取り混ぜ描き出したヒロイン像を、天性と努力のコメディエンヌ黒柳徹子が演じたいと思うのも無理はない。

 ついでながらフランス語のコメディエンヌは、単なる喜劇女優にとどまらない幅広い芸域の女優をも意味する。蛇足ながら・・・。

 どころで、黒柳が数々の実在のヒロインを演じて来た“海外コメディシリーズ”は、11月4日千秋楽の『ルーマーズ』(これは実在のヒロイン劇ではない、笑劇の傑作)をもって打ち止めとなる。ホームグラウンドとして来たル テアトル銀座が、2013年5月末で閉館になるからだ。

 この劇場は、銀座セゾン劇場を名乗っていた当時、一回閉館になっている。その際、黒柳は再開館を願い、劇場の片隅にカエルの置物を隠し置いて来たという。劇場に帰って来ることが出来るように、という意味を込めてのことだった(10月23日付毎日新聞夕刊、高橋豊記者の記事)。

 「今回もこの大好きな劇場がどうか残ってほしいと、またカエルの置物を劇場の見えない場所に置くつもりです」と黒柳。

 ル テアトル銀座が取り壊しになっても、新たなフランチャイズが得られることを心より祈っています。だって彼女のカラスやディートリッヒをもういちど見たいもの。

このシリーズの再開を祈っています
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