黒柳徹子にぴったりという芝居を一本見つけた。ただし、まだ題名もついていないし脚本も書き上げられていない。

 ひとり芝居で、実在したハリウッドの超有名なエージェント、Sue Mengers(1932~2011)をモデルにしている。脚本には、2010年、『レッド』でトニー賞ベスト・プレイに輝いたジョン・ローガン(映画『ラストサムライ』)。この劇作家は実在の人物に興味があるらしく、『レッド』では高名な画家マーク・ロスコ(1909~2008)が主人公であった。

 ローガンはどうやらベット・ミドラー(映画『ローズ』他)を頭に置いてこの脚本を書いているらしい。もしこれが実現すると、1979年以来のミドラーのブロードウェイ出演が実現することになる(10月25日付けニューヨーク・ポスト)。

 ところでエージェントとは何か?ひと口でいってしまえば、代理人ないし窓口を務める人である。俳優、監督、脚本家・・・すべて誰かにエージェントを頼んでいる。有名になるのもギャラが上がるのも代理人の腕次第ということになる。

 ベット・ミドラーがやるかもしれないスーパー・エージェントのスー・メンジャースとはどんな女性だったのだろう。ともかくも口八丁手口八丁だったらしい。陽気で恐いものなし、いつも戦車のように爆進するといわれた。

 最盛期の彼女が面倒を見ていたスターは、バーブラ・ストライサンド、フェイ・ダナウェイ、スティーヴ・マックイーン、キャンディス・バーゲン、ニック・ノルティ、バート・レイノルズなどなど。監督ではシドニー・ルメット、ブライアン・デ・パルマらを抱えていた。

 彼女がビヴァリーヒルズの自宅で開くパーティーにはハリウッドのスターがわんさか集まった。誰もが招かれたいと思ったが、「私は成功した有名人しか招待しないの」と公言してはばからなかった。

 そしでパーティーでは誰よりも彼女自身が輝いて見えた。

 彼女はドイツ・ハンブルグの生まれである。ナチスに追われ、幼いころ、アメリカに両親ともどもやって来てニューヨーク州に住む。英語はまったく出来なかった。

 芸能界入りのきっかけは、とあるエージェントの受付兼電話とりに採用されたことだった。そのころから受付であることを隠し、一人前のエージェントの顔をしてパーティーに潜り込み、自分を売り込んでいたという。

 若いときだろうが、こんなこともあった。高名な作曲家ジェリー・ハーマン(『ラ・カージュ・オ・フォール』他多数)の屋敷に招かれたときのこと。からだにぴったりの肌まで透き通った水着にさっさと着替えたかと思うと、プールに飛び込み、これぞという来賓が現われるや、水から上がって来て濡れたボディをさらして見せびらかしたというのだ。

 (この光景がローガンの脚本に出て来るかどうかは知りませんよ)

 なるほど、ひたすら人生をアグレッシブに生きたスー・メンジャースといつも元気いっぱい、エネルギッシュなベット・ミドラーとはお互いによく似ている。しかし、同じ点で黒柳徹子も決して負けていない。頭の回転の早さでは黒柳がいちばんではないかなどと、私は勝手に思ったりしている。

 上演前からいうのもなんだけれど、徹子さん、スーパーエージェントがヒロインのこのひとり芝居、貴女におあつらえ向きではありませんか?


http://www.imdb.com/name/nm1657855/
スー・メンジャースってこんな女性でした。