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Mr. Nice Guyと呼ばれた男

 アメリカのテレビは、男前でいいのどの歌手~つまりクルーナーですな~をホストに据え、音楽番組を作るという伝統がある。いや昨今は視聴者の好みも変わり、とんと見掛けなくなったから、あったというべきか。

 この伝統はラジオ時代からのもので、ビング・クロスビーがホストの番組などいつも高視聴率だったようだ。

 テレビが主流になってからでは『ペリー・コモ・ショウ』と『アンディ・ウィリアムス・ショウ』が、ひときわ人気と長寿を誇った。前者は日本テレビ、後者はNHKテレビで放映されたから、ご記憶の向きもあるのでは―。

 ペリー、アンディは歌がすばらしかったこともさることながらユーモラスな司会ぶりにも定評があった。毎回のゲストも豪華で多彩だった。

 いうまでもなく歌手として、ペリー・コモ(1912~2001)がアンディ・ウィリアムス(1927~2012)より先輩格である。番組としてもペリーのほうがアンディより先行していた。前者は50~60年代、後者は60~70年代が絶頂期で、年代的に少しずれている。

 ご両人に股がるこんな話がある。ペリー・コモの父親だか母親だかが死んで、ホスト本人がある回を休演しなくてはならなくなったときのこと。誰かがアンディ・ウィリアムスを推薦し、ペリーも気に入って任せることにしたのだが、休むはずの当人が、いつの間にかスタジオに戻って来てリハーサルに参加しているではないか。

 ペリーは半ば本気、半ば冗談のような調子でこう語ったという。
 「葬式に出て戻って来たら、俺の椅子に奴がすわっているなんてことが起こりかねないからね」

 ところで、ニューヨーク・デイリー・ニュースのアンディ追悼記事のなかに思わず膝を叩きたくなるようなくだりがあった。彼のスター性を解く鍵として次の三つの要素を挙げていたのである。

1)哀調を帯びたテノール
2)少年のような顔つき
3)気取らない立ち居振舞

 そしてMr. Nice Guyという呼び名で締めくくっていた。なるほど!

 この三要素と呼称は、当然、先輩格のペリー・コモにも通じるものでもある。

 なおアンディ・ウィリアムスは、67年の初来日以来、計7回、日本公演をおこなっている。最後は確か2006年だった。

 今ごろあちらでミスター・ナイス・ガイは「酒とバラの日々」にちがいない。


2007年来日の際、アンディを挟んで。
右側盛田良子さん(ソニー創立者盛田昭夫夫人)、左側筆者。

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