かつてピエール・カルダンが和太鼓集団鬼太鼓座(おんでこざ)にえらく肩入れしたことがある。パリ・シャンゼリゼ大通りにほど近い自分の劇場エスパス・カルダンで公演を主催するほどの力の入れようだった。

 褌一丁、筋肉美をさらけ出し演奏する姿に東洋的エキゾチシズム以上に男色的薫香を感じとったのかもしれない。

 鬼太鼓座一党に褌姿をすすめたのはカルダン自身という説もある。

 8月3日、赤坂ブリッツへコシノジュンコさんのお誘いでThe Art of the Drumを標榜するTAOを見に行った。題してTAO Special Live at BLITZ。

 こういう気鋭のグループがあることさえ知らずに観劇したのだが、どうしたらお客様に楽しんでもらえるか、その一点に集中した舞台作りにすっかり感心してしまった。

 演奏は大小各種の和太鼓にとどまらない。琴、三味線、横笛などさまざまな和楽器が加わる。パントマイム風から掛け合い漫才風まで芝居の要素もたっぷり。殺陣も出て来る。

 上演時間90分。各景の配列、スピーディーな進行具合もじゅうぶんに計算され尽くされている。
客席を高揚させる場面とリラックスさせる場面との配合が実にうまい。

 プロデューサー・ディレクターの藤高郁夫という人の企画・構成・演出力の賜物だろう。

 パンフレットを見ると、パフォーマーは中心メンバーが男性1名、女性2名、他に男性13名、女性3名、計19名である。

 ひとりひとりが明るく力強い個性を輝かせ、かつ集団としてのパワーも炸裂させる。基本を和太鼓に置きながらも、踊り、演技のトレーニングもよく積んでいると見た。

 今回が初めてというコシノジュンコさんの衣装が、ショウ全体に品位と輝きをもたらしていた。大胆な幾何学的模様、いい意味での和洋折衷、無国籍性を盛り込んだ衣装デザインをさせたら、この人の独壇場である。

 彼女とTAOとの相性は間違いなくいい。

 これは私の誤解、偏見かもしれないが、鬼太鼓座、鼓童、林英哲らの和太鼓パフォーマンスには過度の芸道追求、そこから生じた一種の精神主義が感じられてならない。自己犠牲、それに伴う自己陶酔も臭って来る。疑似宗教性といってもいい。

 というわけで、それと対照的なTAOのエンターテインメント志向に思わずブラボーと叫んでしまった。

http://www.drum-tao.com/

和太鼓の連打が聞こえて来るよう。
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さすが背中もたくましい。
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コシノジュンコさん(前列右より2人目)とメンバーたち。
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