天皇、皇后両陛下が、3泊5日のハード・スケジュールで英国女王エリザベスⅡ世在位60年記念午餐会に出席されたのは、マスコミ報道によって、皆さんご存知の通りです。

 メイン・テーブルに女王を挟んで天皇陛下とスウェーデン国王が着席し、スウェーデン国王のお隣りに皇后陛下が座られていたそうです。

 1953年6月、女王戴冠式に際して、当時まだ皇太子殿下であられた天皇が参列されたことを思えば、両陛下にはこれだけの待遇を受けられる十分な資格がおありと申せましょう。

 当時、天皇は19歳で、学習院大学2年生、(昭和)天皇の名代として戴冠式に参列されたわけです。

 米客船プレジデント・ウィルソン号でアメリカ経由で行かれたという記録が残っています。

 長旅の退屈をまぎらわせるため、船内でピンポン大会、将棋大会が開かれたそうで、随行記者のひとり朝日新聞記者斎藤信也著『新聞記者斎藤信也』(素朴社)の口絵写真には、殿下と斎藤氏が将棋盤を挟んで相対するツーショットが載っています。

 名文記者の誉れ高かった斎藤氏の戴冠式の模様を伝える記事を引用します。

 「ロンドンは花束となって揺れている。きょう二日、無数の歓びの花束が一つの大きな輪となってグルグルまわっている感じだ。その花輪の中心に座を占めるウェスミンスター寺院もまた、ゆるく、かすかに揺れている」(1953年6月付け朝刊第1面)

 「ロンドンは花束となって揺れている」
 昔は新聞でこういう名文が読めたのですね。

 戴冠式を3階の天井桟敷から取材した斎藤氏は、殿下のご様子を次のように伝えています。

 「わが皇太子さまの席は、祭壇に向って右の外国代表席三列に並ぶ第一列。しかも内陣に最も近い一角」(3日付け朝刊第1面)

 「皇太子さまはエリザベス女王がエドワードの冠を受けるクライマックスの瞬間、左手を前のバー(仕切り)にかけてのび上がるようにされた。少年らしい熱心な表情だった」(3日付け夕刊社会面)

 今回の午餐会では78歳の天皇と86歳の女王の間にどんな会話が交わされたのでしょうか。60年前の戴冠式の思い出話もされたのでしょうか。

 God save our gracious queen....



将棋盤をなかに殿下と斎藤氏。
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斎藤記者の名文はこの本で。
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ありし日の斎藤氏。
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