新緑にはまだ少し早い軽井沢。雨もよいで昼間の気温も4℃とか、結構肌寒かった。そんな天候のなか、4月22日午後、軽井沢大賀ホールで大賀典雄氏(1930~2011)を偲ぶコンサートが開かれた。出演はピアノ中村紘子さんとチェロの堀剛さんである。曲目はショパン「チェロ・ソナタ」他。

 このホールは、ソニー社長・会長だった大賀さんゆかりの音楽ホールである。大賀さんの退職金がそっくり建設資金に当てられ、出来上がると同時に軽井沢町に寄贈された。

 パリトン歌手、指揮者でもあった大賀さん自身の考案による木造・五角形のこのホールにすわれば、私たちは、木目細やかで温もりのある最高の音色・音質に接することが出来る。

 大賀さんは、もの作りの天才でCD、MDなどさまざまな“優れもの”を世に送り出した。大賀ホールは、支配人の大西泰輔さんによれば“その最後の遺品”ということになる。

 幕間におこなわれたトークショウで、中村紘子さんが語った大賀さんにまつわるエピソードからふたつほど。

 大賀さんは動物が好きだった。中国原産のチャウチャウを飼っていたこともある。そのチャウチャウを披露するからと中村さん初め何人かが大賀邸に招かれた。

 いざ愛犬登場。ところが大賀さんの姿が見えない。どうしたのかと思ったら自身も四つん這いになって先導をつとめていたという。

 大賀さんもチャウチャウに負けず劣らずガタイが大きかったから、この道行き?はさぞや見ものだったろうなあ。

 もうひとつはお得意のクレープ・シュゼットについて。大賀さんは自宅で宴を張ると、かならずデザートは自らが客の前で作るクレープ・シュゼットと決まっていた。

 あの独特の薄いクレープからして本人が焼いたようだ。

 「角砂糖、オレンジの皮もちゃんと用意されていて、手順もこれがあって次がこれでとか、お茶事のように厳格でした」
 と紘子さん。

 ジェット機操縦もやってのけたし、かと思うとクレープ・シュゼット。大賀さんは趣味も幅広い人だった。

 こういう桁はずれの人物は二度と現れないだろう。





ホール入口には大賀さんのシルエットが。
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ステージ上に飾られた故人の遺影。
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