古澤利夫さんの『明日に向って撃て!』(文春文庫)には「ハリウッドが認めた!ぼくは日本一の洋画宣伝マン」というサブタイトルが付けられている。

 そして更に表紙の帯に、
 「スター・ウォーズからタイタニックまで日本の洋画史を変えた男の全仕事」
 とある。

 誰だって彼のことを英語の達人だと思いますよねえ。

 同書の解説は映画字幕翻訳の第一人者、戸田奈津子さんが執筆しているのだが、そのなかに次のようなくだりがある。

 「彼の口から出る英語には、はっきり言って度肝を抜かれる。文法無視。時には単語の羅列。しかし驚くべきことに、この英語が100%、見事通じるのだ!」

 私も古澤さんに輪をかけての“単語羅列”派なので、これを読んで妙に安心した。もっとも私の英語は10%くらいしか通じませんがね。

 古澤さんは、ハリウッドのメジャー・スタジオの本社で会議に出席するときも通訳は雇わない。

 戸田さんは続けてこう書く。

 「彼の英語に一瞬たじろぐ来日映画人も何人かいたが、すぐに通訳抜きのコミュニケーションで彼という人物に親しみを覚え、彼の仕事への情熱に感動して、多くの大監督(例えばジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン)、大スター(例えばハリソン・フォード、シガニー・ウィーバー)が『日本にフルサワあり』という認識と彼への信頼を持つに至ったのである。」

 しかし、古澤さんのかならずしも流暢ではないかもしれない英語力を補って余りあるものが、彼には備わっている。戸田さんの言葉を借りれば、「ハンパじゃない映画好き」かつ「驚異的な記憶力の持ち主」であればこそ、、、、。

 古澤さんは、ハリウッドの住人たちよりハリウッドを愛し、ハリウッドについて知り尽くしている希有の人物なのである。

 去る4月6日、古澤さんの『明日に向って撃て!』の出版記念会が開かれたことは、本ブログでも紹介したが、その会場で36分ほどの映像がふたつの大スクリーンで映し出された。古澤さんの生い立ち、係わった名作の数々の名ショット、ハリウッドの大監督、大スターたちからの祝辞などが巧みに編集されたドキュメンタリーとでもいえばいいか。

 その映像のラストを飾ったジョージ・ルーカス監督がこう語っている。

 「あなたとのお付合いも35年になりました。次の『スター・ウォーズ』があるなら、またご一緒に」

 “世界のクロサワ”、じゃなかった、“世界のフルサワ”の名声、人気は今後も高まるばかりだろう。

 いっそうのご活躍を―。


出版記念会場で映し出された映像のDVDが、私のところに届きました。
皆さんにお見せしたいなあ。

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