「愛の賛歌」「君といつまでも」の作詞家岩谷時子さんは、老齢、車椅子の日々で、創作活動はままならぬようだが、幸い岩谷さんの名を冠した岩谷時子賞が、年々知名度を上げつつあるのは、喜ばしいことだ。
第3回となることしの岩谷時子賞は、アメリカのジャズ・オーケストラPINK MARTINIとの共演アルバム『1969』(EMIミュージック・ジャパン)が大当たりの由紀さおりの頭上に輝いた。昨今の由紀のもてはやされようからいって、ま、順当な受賞か。
審査委員は川口真(作曲家)、都倉俊一(作曲家)、草野浩二(音楽プロデューサー)の3氏。受賞式は、4月4日、帝国ホテルでおこなわれた(主催岩谷時子音楽文化振興財団)。
話題のアルバムには、1969年度日本レコード大賞受賞曲「いいじゃないの幸せならば」が収録されている。作詞岩谷時子、作曲いずみたく。由紀は、「いいじゃないの~」のオリジナル歌手佐良直美とともに故いずみの真弟子だった。
69年3月、由紀を「夜明けのスキャット」(作詞山上路夫)で売り出し、同じ年の暮れには佐良を「いいじゃないの~」で“レコ大”をとらせる――振り返ればこの年は作曲家いずみたくの当たり年だったわけだ。
天国のいずみは、自分の昔のヒット曲が別の愛弟子で復活した有様をどう眺めていることだろうか。
私は、受賞式後の懇親パーティで、いずみ~岩谷~佐良~由紀の時空を超えての深いえにしに思いを馳せずにいられなかった。
その晩、改めて佐良のオリジナル版、由紀のピンク・マルティーニ版で「いいじゃないの幸せならば」を聴きくらべてみる。
佐良は持ち前のボーイッシュな個性そのまま、淡々たる歌いぶり。素っ気なささえ感じられる。情感過多の従来の歌謡曲に比してそこが受けたのか。
由紀は今の年齢相応の色気をうまく滲ませ、おとなの歌に仕上げている。
69年当時、いずみたくの紡ぎ出した旋律は、それまでの歌謡曲に比して斬新な印象をあたえずに措かなかった。いずみは脱歌謡曲の寵児のようなもてはやされようだった。その新鮮さを買われて、日本レコード大賞の栄冠を勝ち得たのだろう。
しかし、今、佐良、由紀いずれで聴いても“脱歌謡曲”の印象はない。しっかり“歌謡曲”している。とくに由紀のほうはアメリカのジャズ・バンドがバックにもかかわらず。
時代の移り変わりに伴って私たち聴く側の受け止め方も異なって来るのだろうか。
歌は世に連れというが、歌の印象もまた世に連れなのかもしれない。
第3回となることしの岩谷時子賞は、アメリカのジャズ・オーケストラPINK MARTINIとの共演アルバム『1969』(EMIミュージック・ジャパン)が大当たりの由紀さおりの頭上に輝いた。昨今の由紀のもてはやされようからいって、ま、順当な受賞か。
審査委員は川口真(作曲家)、都倉俊一(作曲家)、草野浩二(音楽プロデューサー)の3氏。受賞式は、4月4日、帝国ホテルでおこなわれた(主催岩谷時子音楽文化振興財団)。
話題のアルバムには、1969年度日本レコード大賞受賞曲「いいじゃないの幸せならば」が収録されている。作詞岩谷時子、作曲いずみたく。由紀は、「いいじゃないの~」のオリジナル歌手佐良直美とともに故いずみの真弟子だった。
69年3月、由紀を「夜明けのスキャット」(作詞山上路夫)で売り出し、同じ年の暮れには佐良を「いいじゃないの~」で“レコ大”をとらせる――振り返ればこの年は作曲家いずみたくの当たり年だったわけだ。
天国のいずみは、自分の昔のヒット曲が別の愛弟子で復活した有様をどう眺めていることだろうか。
私は、受賞式後の懇親パーティで、いずみ~岩谷~佐良~由紀の時空を超えての深いえにしに思いを馳せずにいられなかった。
その晩、改めて佐良のオリジナル版、由紀のピンク・マルティーニ版で「いいじゃないの幸せならば」を聴きくらべてみる。
佐良は持ち前のボーイッシュな個性そのまま、淡々たる歌いぶり。素っ気なささえ感じられる。情感過多の従来の歌謡曲に比してそこが受けたのか。
由紀は今の年齢相応の色気をうまく滲ませ、おとなの歌に仕上げている。
69年当時、いずみたくの紡ぎ出した旋律は、それまでの歌謡曲に比して斬新な印象をあたえずに措かなかった。いずみは脱歌謡曲の寵児のようなもてはやされようだった。その新鮮さを買われて、日本レコード大賞の栄冠を勝ち得たのだろう。
しかし、今、佐良、由紀いずれで聴いても“脱歌謡曲”の印象はない。しっかり“歌謡曲”している。とくに由紀のほうはアメリカのジャズ・バンドがバックにもかかわらず。
時代の移り変わりに伴って私たち聴く側の受け止め方も異なって来るのだろうか。
歌は世に連れというが、歌の印象もまた世に連れなのかもしれない。