名作なのに上演されなかったミュージカル『CHESS』が、コンサート型式ながら初お目得した(1月26~29日、青山劇場)。この作品の特色については、1月27日UPの私のブログを参照していただくとして、今回の舞台成果について問題点を指摘しておく(1月26日、所見)。

 いちばんの問題点。『CHESS IN CONCERT』と名乗りながら、結構大掛かりな舞台装置を組んだり、出演者に凝った衣装を着せたりしている。短期間公演だし、予算が十分じゃないからイン・コンサートにしたのではないのか?

 これって演出家(荻田浩一)のわがまま?出費がかさんだであろうプロデューサー(梅田芸術劇場)に同情せずにいられない。

 コンサート型式なのだから、ひとつひとつの楽曲が鮮やかに響いて来てもいいんじゃないの?「One Night In Bangkok」「I Know Him So Well」など、さすがアバのベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァース作曲ならではの親しみやすい名曲がいくつもあるのに。

 物語の筋と背景が見えて来ない。そもそも、もとのミュージカル自体、東西冷戦という歴史的背景を背負ってる。ベルリンの壁崩壊(1989年)以前の物語なのだ。

 加えてアメリカ人のチェス・プレーヤー(中川晃教)の心理、行動が気まぐれと来ている。ソ連のプレーヤー(石井一孝)とアメリカ側のセコンド(安蘭けい)のロマンスの発端も結末も鮮明でなくわかりにくい。場所もイタリアからタイに飛んだりする。

 それだけに観客の理解を助ける演出上の工夫があってしかるべき。DVDで『CHESS IN CONCERT』ロンドン版を見ると、ゲームがおこなわれる各地の光景など映像を多用している。この手はお金がかかるから無理だとしても、場面や楽曲名を電光掲示板で示すとか、、、、。

 出演者では審判役の浦井健治、ソ連プレーヤーの夫人役AKANE LIVが敢闘賞ものの歌唱力、演技を見せ頼もしかった。

 音楽監督とピアノの島健さん、大作ととり組んでご苦労さまでした。でも楽曲の宝庫のようなミュージカルだから挑戦し甲斐があったのでは、、、、、。

 まだ大阪公演(2月10~12日、梅田芸術劇場メインホール)があるので、手直しを期待したい。


http://www.umegei.com/schedule/109/


デュエットする安蘭けいと石井一孝。
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健闘した浦井健治。
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中川晃教、よくロックしていた。
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photo:村尾昌美



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 なおHPのほうに2011年のミュージカル回顧(朝日新聞演劇担当小山内伸さん、作家有吉玉青さん)をUPしています。ご用とお急ぎでない向きはお立ち寄りください。