今、日劇といえば、有楽町マリオン内のロードショウ館TOHOシネマズ日劇のことだ。しかし、昔は日劇(正式には日本劇場)というと、映画と実演(この言葉も今では死語になった)二本立ての大劇場で、ステータスもすこぶる高かった。

 歌手はここの舞台を踏んで初めて一人前といわれたものだ。笠置シズ子、越路吹雪、江利チエミ、三橋美智也、村田英雄、舟木一夫、皆然り。

 更にこの劇場は専属ダンシング・チームを持っていた。通称NDT(日劇ダンシング・チーム)。結成1936年、解散1981年。宝塚歌劇団、松竹歌劇団(SKD)と華やかなレヴィウを競った時代もある。

 去る12月24日、昔の日劇にほど近いよみうりホールで『有楽町で逢いましょう/日劇2011/昨日・今日・明日』(構成・演出日高仁)という今どきめずらしいレヴュウが上演された。

 日劇が閉館しNDTが解散して、30年たっているというのに、旧ダンシング・チームの残党、その系譜を継ぐダンサー、歌手たちが全員集合した舞台である。

 出演者を代表しておヒョイこと藤村俊二が挨拶に立つ。「本日は幽霊たちをご覧においでくださり有難うございます」

 おヒョイのユーモアのセンス衰えず。

 ショウは日舞、ハワイアン、フラメンコ、ジャズ、ロック、シャンソン、歌謡曲なんでもあり。このなんでもありの一種の“ごった煮”的楽しさこそレヴュウの特色ではなかろうか。

 日舞をラテン・リズムで踊る「深川マンボ」など、今や無形文化財?的な価値がある。

 ダンサーたちのなかには70歳を超える年齢の人たちもいたかもしれない。どことなく動きがにぶいのもご愛嬌か。

 セリなしスライド・ステージなし。大階段はたった6段。にもかかわらずレヴュウの魅力あふれる舞台を作り出した日高仁さんに拍手を贈る(日高さんは、日劇全盛期のエース演出家。私よりふたつ年上のはずです)。

 ハネたあと楽屋を訪れたら、さっき軽やかな踊りを見せていたダンサーのひとりが、上の階に通じる狭い急な鉄製の階段で立ち往生していた。

 幻のレヴュウの、これまた幻のような再現にブラボーと叫びたい。




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