青江三奈のジャズ・アルバムについて、きのう、私は「リズム感、フレージングすべて、ジャズの本道を行っている。」と書いた。

 その前言を翻すつもりはまったくない。しかし、あくまでも日本人のジャズなのですね。猿真似で向うの大歌手に迫ろうなんて気はさらさらなさそうに見える。

 むしろ日本人歌手であることを一種のスパイスのように利用しているふしさえ感じられる。

 聴く私も日本人だから、そういう青江のジャズが楽というか、自然になじんでしまう。

 青江の英語は完璧とは云い難い。今の日本のジャズ歌手には、たとえばグレース・マーヤとか日本人離れした英語で歌う人がいる。
しかし、青江が1941年生まれだということを考慮すれば、じゅうぶん許されていい英語ではなかろうか。

 アルバム『THE SHADOW OF LOVE』のなかでとりわけ注目したいのは、「Bourbon Street Blues」です。彼女の超ヒット曲「伊勢佐木町ブルース」の英語版なのだが、彼女のセクシー・ヴォイスに背筋がぞくぞくっとなる。

 これはアメリカ人が聴いたらジャズ・ヴォーカルではないと云うかも知れない。かと云って日本人が聴いてかならずしも歌謡曲でもない。

 ジャズと歌謡曲の不思議な混淆。日本の歌謡曲が元唄なのにエキゾチシズムはおかしいかもしれないが、独特のエキゾチシズムがある。

 バーボン・ストリートはニューオリンズのあの歓楽街のことですよね。バーボン・ストリートと伊勢佐木町は、人の心を浮き立たせるところが似通っているのかな。

 元唄の作詞は川内康範、作曲は鈴木庸一、英詞はMark Cass。

 青江三奈のジャズは、よくも悪くも日本のジャズである。もっと云わせてもらえば銀座のジャズである。それも1960~70年代の銀座の、、、、、。

 青江のジャズを聴いていると、あまり大きくない銀座のクラブでマイクを持つ彼女のドレス姿が目に浮かぶ。ついでにウイスキー水割りのグラス片手の、私自身の姿も、、、、、。


http://diskunion.net/jazz/ct/detail/THCD-54

ふたりのサイドメンに囲まれた青江三奈。ライナーノートより。
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「Bourbon Street Blues/Isezakicho Blues 青江三奈」YouTubeより: