懐しの野口久光さんの映画ポスター | 安倍寧オフィシャルブログ「好奇心をポケットに入れて」Powered by Ameba

懐しの野口久光さんの映画ポスター

 週刊新潮10月13日号BOOKS欄で立川談四桜(この人、書評家としても売れている。)が、根本隆一郎企画・監修・編集『野口久光シネマ・グラフィックス』(開発社)をとり上げているので、とっても嬉しくなってしまった。

 ことしの6月、刊行されて以来、私自身、手元に置いて飽かずに眺めている画集だからだ。

 野口久光さん(1909~94)の名前の久光は、もちろん正式にはヒサミツだが、誰もがキュウコウさんと呼んでいた。

 映画評論家、音楽評論家として著名だったが、ポスター画家としても超一流だった。この画集には『制服の処女』(ドイツ映画、1933)から『青春デンデケデケデケ』(監督大林宣彦、1992)まで数多くの映画ポスターが収められている。

 スター素描、LPジャケットなどを含め計330点。いずれもどこかメルヘン的なタッチと色使いで、ほっとした気持ちになる。

 談四桜の師匠立川談志曰く。
 「『禁じられた遊び』女の子がひとりで立っている野口先生のポスター、映画の全てを語っている。」(同書特別寄稿より)

 その映画の本質をずばり見抜いて、それをポスター画にしてしまう―そんな芸当が出来た人は、世界広しといえども昔だってキュウコウさんだけだし、ましてや今はいるはずもない。

 映画への慈愛に満ちた眼差しあればこそ。



1933年の『制服の処女』のポスター、右から左への文字に注目を。
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