存在することが奇跡だし、出会うこともまた奇跡だと思わずにいられませんでした。

 バイエルン国立歌劇場『ロベルト・デヴェリュー』でイングランド女王エリザベッタを演じたエディタ・グルベローヴァです。

 さすが世界屈指のコロラトゥーラ・ソプラノ、ドニゼッティの名アリアに見事魂を吹き込んで見せました。

 超高度の歌唱力、役柄の深い理解力と表現力あってこそ。世界屈指の歌手ならではの至芸です。

 エリザベッタは臣下デヴェリューを寵愛しています。しかし、彼の心はノッティンガム公爵夫人サラに傾いている。
 その上、デヴェリューは反逆罪に問われているため、彼を生かすも殺すも女王次第という難しい立ち場に立たされています。

 複雑な四角関係の要が女王なのです。

 愛と権力の狭間にあって女王の苦悩と孤独は深まりゆくばかり。

 物語の時代背景は16世紀のはずですが、バイエルン歌劇場の舞台は現代に置き換えられています。(オペラ自体の初演は1837年)

 どこかの政府か大企業の内部の出来事と見做されているのです。なんとも斬新な演出(クリストフ・ロイ)でしたが、グルベローヴァは難なくその新解釈をこなしていました。

 今の時代にまだほんものの芸術が存在するんですねぇ。
 (9月27日、東京文化会館)

 まだ1回、10月1日3:00p.m.の公演があります。残券もあるはず。
 見逃した向きはDVD(ユニバーサルミュージック)でどうぞ。


http://bayerische.jp/roberto.html


熱唱するグルベローヴァ。
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