もしあなたが人妻で、ご主人が牝の山羊と“寝ている”とわかったとしたら、どうしますか。更に丹那が“彼女”を浮気ではなく純粋に愛していると知ったなら、、、、、、。
 この世には世の理(ことわり)を無視したことが起こり得る。人呼んでそれを不条理という。エドワード・オルビー作『山羊、、、それって、、、もしかして、、、シルビア?』は、突然、人間世界を襲うその不条理を真正面から見据えた不条理劇の傑作です。
 高名な建築家マーティン(今村俊一)と妻スティービー(富沢亜古)の満ち足りた生活に、“獣姦”というとんでもない事態が出来(しゅったい)するのです。しかも、ひとり息子(釆澤靖起)はどうやらゲイらしい。
 夫婦が居間の家具、美術品を手当たり次第投げ合う光景もすさまじいけれど、父と子が濃厚なキスを交わすところもギョッとなります。
 ところで作者が“獣姦”の裏に潜り込ませた寓意はなんなのでしょう。世間の常識が否定するからといって、その事柄は正しくないのか。条理と不条理、常識と非常識の逆転です。
 もとの台本はもちろん、マーティンの友人役(若松泰弘)を含む4人の俳優たちの演技(富沢がとくに好演)、そして演出(鵜山仁)すべてexcellent! とくに緻密で大胆な演出にbravo! 翻訳添田園子。文学座アトリエ公演、7月30日まで。


              左より 富沢亜古、釆澤靖起、今村俊一
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                  熱演する富沢(左)と今村
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