たとえばエルトン・ジョンには2005年に結婚した同性の配偶者がいる。しかし、同じイギリス人で同じくサーの称号をあたえられているノエル・カワード(1899~1973、劇作家・演出家・俳優)の時代は、同性同士の結婚は法律で禁じられていた。
 カワード作『秘密はうたう』(66)の主人公の作家サー・ヒューゴ(村井国夫)は、昔の遊び相手の女優カルロッタ(保坂知寿)から彼がある男宛に書いたラブレターを突きつけられ、大あわてにあわててしまう。劇中の作家の苦渋と困惑はカワード自身のものにちがいない(イギリスでの初演時、作家の役はカワード自身が演じた)。
 現在のヒューゴにはてきぱきと秘書役を務めてくれる妻ヒルダ(三田和代)がいる。結婚やカルロッタとの恋は偽装だったのか?かつてボーイフレンドに当てた手紙を読み返し目頭を抑えつつ嗚咽する場面は、同性愛者ならずとももらい泣きするかも。
 村井、保坂、三田と花も実もあるベテラン3俳優がそろったので、安心して見ていられた。他にホテルのボーイ役で神農直隆。 
 サー・エルトン、いい時代になりましたね。あなたの感想をお伺いしたい。

(演出マキノノゾミ、翻訳高橋知伽江。7月16日、紀伊国屋サザンシアターで観劇。
7月24日まで同ホール、7月30、31日、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール)



        『秘密はうたう』の舞台 左より三田和代、保坂知寿、村井国夫
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                     村井と保坂
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撮影:引地信彦