ジブリの新作『コクリコ坂から』の最初のほうのシーン。ヒロインの「海」が庭先にある旗竿に航海安全を祈る小旗を揚げている。それは、二度と帰って来ないと知りつつ、いつの日か帰ってくるかも知れない父のための毎朝の儀式である。
 ある日、海上のタグボートから同じく小旗による応答があった。そこには「MER」の文字が読めた。merはフランス語の海。船の上の少年は、旗を上げる少女が誰なのかわかっているのだ。そういえばシャンソンに「ラ・メール」というのがあったっけ。
 少年少女が通う学園の週刊新聞に「少女よ 君は旗をあげる なぜ」という詩が載り、ヒロインが友だちから「これ、メル(=メール=海)のことじゃない?」とからかわれる場面もある。
 鈴木敏夫プロデューサーが思いついた幻の惹句「携帯の無い時代、みんな幸せだった」がいかにすばらしいか、改めて納得せずにいられない。メールの無い時代、メルは幸せだった、、、、。
 ちなみに少女の父は、朝鮮戦争の際、LST(米軍戦車揚陸艦)に乗り込み命を落としている。さり気なく朝鮮戦争を滑り込ませたあたりは、原作漫画にあるのかどうか知らないが、宮崎駿(企画・脚本)ならではの戦後史へのこだわりか?(脚本丹羽圭子、監督宮崎吾朗)


『コクリコ坂から』
7月16日(土)より、全国東宝系ロードショー
上映時間:91分

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