笑いはどういう状況のもとで生じるのか?人間やものの間で価値観や習慣が異なり、ずれや衝突が起こると笑いが生まれやすい。摩擦をやわらげる効果があるからです。
 希代の喜劇作家、三谷幸喜氏が新作『ベッジ・パードン』でロンドン留学時の夏目漱石(野村萬斎)を主人公に据えたのも、異文化同士のぶつかり合いこそ笑いのネタだということを十分に承知しているからでしょう。
 見なれない題名は、漱石が、下宿先のメイド(深津絵里)の繰り返す「アイ・ベック・ユア・パードン」をこのように聞き違えたというエピソードに基づいているようです。
 漱石は自室を訪れる他人に靴をぬぐことを強要します。第一、漱石にとって、一生懸命勉強してきたはずの英語が通じない。3時間近い長尺になったのは笑いのネタが主人公の回りにあり過ぎたからでしょう。
 この芝居、基本的にはファルス(笑劇)ですが、漱石とメイドのラヴ・ロマンスでもあります。帰国後の栄達も保証されている明治のエリートが、孤独に悩まされたとはいえ、こうやすやすと異国の女性と恋に落ちるものなのか?行きずりのお遊びならわかるのですが、、、、。
 ともあれ、笑いで一瞬でも暑さを吹き飛ばしたい向きは是非!


熱演する出演者たち、左より大泉洋(同じ下宿のソータロー)、野村萬斎(漱石)、深津絵里(メイド)
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       左より2人目浅野和之(11役をこなす)、3人目浦井健治(メイドの弟)
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撮影:谷古宇正彦

「ベッジ・パードン」
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2011/06/post_230.html